2005年 09月 10日
【5116a】 老い・・身体の衰退と精神の成熟の塊 |
懐かしい教え子からメールが届きました。以前、勤めていた岡山県高梁市の順正短期大学を平成3年に卒業した教え子で「私も三十路を超えて、2児の母です」とありました。今は養護老人ホームで介護福祉士の仕事をしており、現場の主任。「最近は、いつも先生の教えを思い出して、そうだ、そうだと納得、ガッテンしてます」とありました。
▼"先生の教え”として書かれていたのは「老いは身体の衰退と精神の成熟の塊・・・両義性に注意」 「これは、当時の社会福祉概論の講義ノートです。その意味が今は良く分かります」と附記してありました。
▼もう15年も前の情景が甦ってきました。短大で私が教えていたのは介護福祉士の養成コース。講義と同時に実際に老人施設に行って介護の実際を実地に学ぶ「介護実習」が重要視される学科でした。
▼この子が1年生の秋、津山市の養護老人ホームへ実習に出ました。ここで「担当のお年寄りの介護計画を作りなさい」という課題が出されました。学校で習った手順に従って、その方を観察し、何が必要な介護課題か? 探すのだが、何も見えない。「いつも日向ぼっこしていて・・・・ニコニコとして、何を訊いても、いいの、大丈夫ばかりで」 巡回した私にこの子は「このお婆さんに日々、ハリのある生き甲斐に満ちあふれた生活を作ってあげたいのですけど」 全くお手上げ、と愚痴をこぼしました。
▼実を言うと”介護”という仕事で一番、むずかしいのは、このように特に身体介助が必要でないお年寄りの”見守り介護”です。一番、大事なのはコミュニケーション。よい話し相手になるのが介護者に望まれる態度であるワケです。
▼そこで私が与えたアドバイスが「老いは身体の衰退と精神の成熟の塊・・・両義性に注意」 「このお婆さん、90歳だけど身体に問題はない。その上、円満な性格で施設内の人間関係も問題ない。見るからに満ち足りた日々だね。と、すると、大切なのは、その”精神の成熟”を高める方法。一番、いいのは五感を働かすことだ」
▼そして、この学生に、「目を閉じ、耳をすまして、周囲の匂いを嗅いで、手で自分の顔を撫でて鼻、口、耳、足、腰、肩など確かめてみてご覧」と、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の感性を呼び覚ましてみました。 「ホラ、こうして五感の感性を呼び覚ますと違う世界が見えるでしょう。お婆さんと一緒に、それをやってみたら・・・きっと仲良く会話が弾み、楽しくなるよ」
▼この学生は私の別の授業「障害形態別介護技術Ⅱ」(視覚障害者介護)での実習を思い起こしました。そこで昼食時に眼帯をしてお婆さんと一緒に食事を愉しんでみたのです。視覚を遮断して触覚と聴覚だけを頼りに食べた食事。お婆さんは全く経験したこともない新しい嗅覚、味覚を発見して大喜び、新しい世界が開け、話題がどんどん膨らんで、試みは大正解。以来、お婆さんは、毎日、この学生を指名して頼りにするようになりました。
▼「いいかね。五感は人間の感性の源。日向ぼっこの中に世界のすべてがある。五感から入ってくる一瞬、一瞬の今を繋ぐのは過去の出来事や想い出。そこからわき出る英知や知恵は未来への想いを膨らませる。高齢者の誰もが到達している"老いの円熟”を介護人に学んでほしいのだ」
▼15年前、学生に言い聞かせた、この講義。他人事ではありません。今、老境の深まりを感じつつあるこの身。講義の真偽を自ら確証すべき課題だ、と内省しているところです。
▼"先生の教え”として書かれていたのは「老いは身体の衰退と精神の成熟の塊・・・両義性に注意」 「これは、当時の社会福祉概論の講義ノートです。その意味が今は良く分かります」と附記してありました。
▼もう15年も前の情景が甦ってきました。短大で私が教えていたのは介護福祉士の養成コース。講義と同時に実際に老人施設に行って介護の実際を実地に学ぶ「介護実習」が重要視される学科でした。
▼この子が1年生の秋、津山市の養護老人ホームへ実習に出ました。ここで「担当のお年寄りの介護計画を作りなさい」という課題が出されました。学校で習った手順に従って、その方を観察し、何が必要な介護課題か? 探すのだが、何も見えない。「いつも日向ぼっこしていて・・・・ニコニコとして、何を訊いても、いいの、大丈夫ばかりで」 巡回した私にこの子は「このお婆さんに日々、ハリのある生き甲斐に満ちあふれた生活を作ってあげたいのですけど」 全くお手上げ、と愚痴をこぼしました。
▼実を言うと”介護”という仕事で一番、むずかしいのは、このように特に身体介助が必要でないお年寄りの”見守り介護”です。一番、大事なのはコミュニケーション。よい話し相手になるのが介護者に望まれる態度であるワケです。
▼そこで私が与えたアドバイスが「老いは身体の衰退と精神の成熟の塊・・・両義性に注意」 「このお婆さん、90歳だけど身体に問題はない。その上、円満な性格で施設内の人間関係も問題ない。見るからに満ち足りた日々だね。と、すると、大切なのは、その”精神の成熟”を高める方法。一番、いいのは五感を働かすことだ」
▼そして、この学生に、「目を閉じ、耳をすまして、周囲の匂いを嗅いで、手で自分の顔を撫でて鼻、口、耳、足、腰、肩など確かめてみてご覧」と、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の感性を呼び覚ましてみました。 「ホラ、こうして五感の感性を呼び覚ますと違う世界が見えるでしょう。お婆さんと一緒に、それをやってみたら・・・きっと仲良く会話が弾み、楽しくなるよ」
▼この学生は私の別の授業「障害形態別介護技術Ⅱ」(視覚障害者介護)での実習を思い起こしました。そこで昼食時に眼帯をしてお婆さんと一緒に食事を愉しんでみたのです。視覚を遮断して触覚と聴覚だけを頼りに食べた食事。お婆さんは全く経験したこともない新しい嗅覚、味覚を発見して大喜び、新しい世界が開け、話題がどんどん膨らんで、試みは大正解。以来、お婆さんは、毎日、この学生を指名して頼りにするようになりました。
▼「いいかね。五感は人間の感性の源。日向ぼっこの中に世界のすべてがある。五感から入ってくる一瞬、一瞬の今を繋ぐのは過去の出来事や想い出。そこからわき出る英知や知恵は未来への想いを膨らませる。高齢者の誰もが到達している"老いの円熟”を介護人に学んでほしいのだ」
▼15年前、学生に言い聞かせた、この講義。他人事ではありません。今、老境の深まりを感じつつあるこの身。講義の真偽を自ら確証すべき課題だ、と内省しているところです。
by zenmz
| 2005-09-10 00:00