2005年 07月 11日
[5045] 戦争体験風化の構造 |
梅雨があけて真夏の太陽がジリジリと天地を焼くようになると、毎年、私は、原爆と敗戦を生々しく思い出します。それは、恐らく、私の同年代の人が共感していただける”世代共通のトラウマ”だと思います。
★原爆被災の体験、そして学徒動員で軍需工場で迎えた敗戦、続く精神崩壊に伴う虚脱・・・何時になっても、その体験は焼き付く真夏の太陽とともに甦るのです。15歳で連れ込まれた文化大革命は”個人の前に先ず国家ありき”の時代から”一人の命の価値は地球より重い”時代へと数年、続き、大学に進んだ時には”民主主義”が金科玉条の「錦の御旗」に
★だが、私のトラウマは消えません。社会人としての出発は新聞記者。広島に勤務した9年間は”ゲンバク記者”とあだ名されるほど被爆者救援・平和運動に関する報道に専念しました。
★被爆者問題との取り組みは、「人権」という新しい価値を教えてくれました。戦争の時代、国民総動員、徴兵で奪われたものはその「人権」でした。その結果、国民が得たものは、沖縄玉砕、焼夷弾による全国大中小都市の焦土化、そして広島・長崎への2発の原爆。それはすべて非戦闘員を大量虐殺しました。
★新聞社定年後は、大学で人権、平和、福祉の講義を始めました。そして20年後、気がつくと、終戦の年、生まれた子は”還暦”を迎えています。”戦争を知らない世代”は、はや2世代にわたり、3代目世代に入りつつあります。
★今の平和の礎をなす戦争体験を忘れるな・・・それを風化させてはならぬ、と戦争体験世代は各地で「語る会」を開き、地味ではあるが、粘り強い活動を続けています。
★しかし、最近、大きな声となって盛り上がってきた政治運動は「普通の国家」論。「軍備なき国が国家か」と憲法改正を唱え、還暦前後から団塊の世代の人々が多く賛同しています。「戦争体験を語り継ぐ」人々の声には「時代が違う、北朝鮮が攻めてきたら・・・・どうする!」と"平和ボケ”と冷笑する人さえ出てきました。
★「語り部と聞き手。その間の溝をどう埋めればいいのだろうか。青山学院高等部の入試問題。「沖縄への修学旅行でひめゆり学徒隊の女性から話を聞いた生徒が『退屈で飽きた』と感じた」という内容の英文が出題された。作成したのは同校の教師だった 【9日付・毎日新聞コラム:発信箱:風化】 わざわざ沖縄は修学旅行したのは何のためか? この若い記者も嘆きの記事を書いています。
★終戦後約30年間、フィリピン・ルバング島のジャングルで潜伏生活を続けた元陸軍少尉・小野田寛郎さんは、今、ブラジルに住んでいます。先日、放映されたNHK特別番組で、何故、日本を脱出し、ブラジル移住を決めたのか? その心境を語っておられました。
★「それはケンカで疲れたからですよ。戦争のこと、ジャングル潜伏のコト、訊ねられるから話すけど、話せば話すほどケンカになる。ある日、ジャングルから出て来た時のことをこう言われた。”元上官をルパングまで呼びつけて・・・カッコつけて” そこで切れちゃった。もうニッポンはダメだ。ここには住めない、と」
★戦争体験を風化させるな・・・建前は学校教育を先頭に社会教育まで総動員して叫ばれています。だが、語り部と聞き手の乖離(かいり)は広がるばかり。
★ここは是非、今、還暦期から団塊の世代にある「戦争を知らない第一世代」の皆さんにじっくり考えていただきたい問題です。あなた達はもう戦争にかりだされる心配はありません。でも・・・孫に徴兵招集が来たら、をどうしますか? オジイチャン・オバアチャンの選択が問われるのは、そのときです。丁度、あなた達が、今、戦中世代の選択を問い質しているように。
★原爆被災の体験、そして学徒動員で軍需工場で迎えた敗戦、続く精神崩壊に伴う虚脱・・・何時になっても、その体験は焼き付く真夏の太陽とともに甦るのです。15歳で連れ込まれた文化大革命は”個人の前に先ず国家ありき”の時代から”一人の命の価値は地球より重い”時代へと数年、続き、大学に進んだ時には”民主主義”が金科玉条の「錦の御旗」に
★だが、私のトラウマは消えません。社会人としての出発は新聞記者。広島に勤務した9年間は”ゲンバク記者”とあだ名されるほど被爆者救援・平和運動に関する報道に専念しました。
★被爆者問題との取り組みは、「人権」という新しい価値を教えてくれました。戦争の時代、国民総動員、徴兵で奪われたものはその「人権」でした。その結果、国民が得たものは、沖縄玉砕、焼夷弾による全国大中小都市の焦土化、そして広島・長崎への2発の原爆。それはすべて非戦闘員を大量虐殺しました。
★新聞社定年後は、大学で人権、平和、福祉の講義を始めました。そして20年後、気がつくと、終戦の年、生まれた子は”還暦”を迎えています。”戦争を知らない世代”は、はや2世代にわたり、3代目世代に入りつつあります。
★今の平和の礎をなす戦争体験を忘れるな・・・それを風化させてはならぬ、と戦争体験世代は各地で「語る会」を開き、地味ではあるが、粘り強い活動を続けています。
★しかし、最近、大きな声となって盛り上がってきた政治運動は「普通の国家」論。「軍備なき国が国家か」と憲法改正を唱え、還暦前後から団塊の世代の人々が多く賛同しています。「戦争体験を語り継ぐ」人々の声には「時代が違う、北朝鮮が攻めてきたら・・・・どうする!」と"平和ボケ”と冷笑する人さえ出てきました。
★「語り部と聞き手。その間の溝をどう埋めればいいのだろうか。青山学院高等部の入試問題。「沖縄への修学旅行でひめゆり学徒隊の女性から話を聞いた生徒が『退屈で飽きた』と感じた」という内容の英文が出題された。作成したのは同校の教師だった 【9日付・毎日新聞コラム:発信箱:風化】 わざわざ沖縄は修学旅行したのは何のためか? この若い記者も嘆きの記事を書いています。
★終戦後約30年間、フィリピン・ルバング島のジャングルで潜伏生活を続けた元陸軍少尉・小野田寛郎さんは、今、ブラジルに住んでいます。先日、放映されたNHK特別番組で、何故、日本を脱出し、ブラジル移住を決めたのか? その心境を語っておられました。
★「それはケンカで疲れたからですよ。戦争のこと、ジャングル潜伏のコト、訊ねられるから話すけど、話せば話すほどケンカになる。ある日、ジャングルから出て来た時のことをこう言われた。”元上官をルパングまで呼びつけて・・・カッコつけて” そこで切れちゃった。もうニッポンはダメだ。ここには住めない、と」
★戦争体験を風化させるな・・・建前は学校教育を先頭に社会教育まで総動員して叫ばれています。だが、語り部と聞き手の乖離(かいり)は広がるばかり。
★ここは是非、今、還暦期から団塊の世代にある「戦争を知らない第一世代」の皆さんにじっくり考えていただきたい問題です。あなた達はもう戦争にかりだされる心配はありません。でも・・・孫に徴兵招集が来たら、をどうしますか? オジイチャン・オバアチャンの選択が問われるのは、そのときです。丁度、あなた達が、今、戦中世代の選択を問い質しているように。
by zenmz
| 2005-07-11 14:36