2010年 09月 09日
【10120】 甦る松根油・・・技術の”戦争と平和” |
★ もう2,3年も前の話ですが、原油高でバイオ燃料など石油代替燃料が注目されていた折、戦争中に枯れ松の根っ子から蒸留して製造した「松根油」(しょうこんゆ)の現物が鳥取県米子市立山陰歴史館に保存されていることが分かり、大きな話題になったことがあります。
★ 早速、出かけて、見て来ました。懐かしや! 懐かしや!
間違いなく、それは、太平洋戦争の末期、戦闘機の燃料が不足し、急遽、全国の山林にある松の切り株を掘り起こして作った油、「松根油」でした。
★ 年寄りや国防婦人会の女性、さらには小中学生も動員されて切り株の根を掘り出す作業が全国で始まったのです。鍬やスコップなどを用いてすべて手堀り。半日かけてようやく一つの松の根を掘り起こすような重労働でした。
★ 《200本掘れば、飛行機は1時間飛べる》と、追いまくられた号令を覚えています。当時、私は13歳。高等小学校の1年生、今の中学1年生でしたが、動員され、一所懸命、掘りました。ちょっと年上の年齢の志願兵だった乙種予科練生の指導を受けながらスコップで掘り起こしました。
★ 掘り起こした切り株の根は細かい割木にして 工場に送られ、釜にいれて蒸します。揮発分を冷却すると”松根原油”になるのです。その工場も一度、見学したこともありました。当時、これを指導した森滝先生のコトバを今も覚えています。
★ ソウだった! 軍用機の燃料が不足し、「ショウコンユ」で戦争を闘った時代があった。飛行機を飛ばせるほど良質のバイオ燃料は、既に62年も前の昭和19年から20年にかけて開発されていて実用化していた・・・。そんな思いが甦って来ました。
★ 化石燃料の枯渇が心配されている今、救世主になるのでは?・・・・俄然、興味が湧いて、調べてみました。すると、「ハリマ化成株式会社」という会社がパインケミカルの研究を基に機能性樹脂、製紙用薬品、電子材料の開発を進めていることが分かりました。あの”松根油”が「パインケミカル」に名を変えて、すでに多方面の商品開発に実用化されているのです。
★ この会社のホームページによりますと・・・
★ ビックリしました。この会社では、既にこの「松脂」(ロジン)を使って兵庫県加古川製造所のバイオマス発電事業で自然環境型事業を実用化しているのです。その研究と実用化はどこまで進んでいるのか?
★ 研究開発の現況を示したページを開きますと【パインケミカルから「接合科学」へ】 というタイトルで「素材の特性を活かす独自の機能性樹脂合成技術・界面制御技術をコア技術として、常に新しい「接合(つなぐ)」を科学しつづけています。」と説明があり、その全体像がチャートで図解されています。
★ 一覧、思わず息を呑むほどスゴイ!
《ハリマ化成は「自然の恵みをくらしに活かす」を基本理念に、先進の技術で様々な製品をつくり、人々のくらしに貢献しています。》と、誇らしく、宣言していますが、本当にバイオ研究とその実用化への取り組みは、ここまで進んでいるのですね。
★ この会社は、戦後すぐ、兵庫県加古川市に誕生した「播磨化成工業」が発展したものだそうですが、戦争中に開発された「松根油」に目をつけて、ひたすら樹脂化学の実用化研究を続けてきて現在、従業員769人 売り上げ355億円(いずれも2007年3月期)の中堅企業に育ちました。
**********
★ もちろん、同社のメイン商品である「松脂」(ロジン)の原点「松根油」の紹介もあります。「パインケミカル」のページに 「松根油(しょうこんゆ)を訪ねて」 という楽しい読み物もありました。岐阜県明宝村立博物館の訪問記です。
★ 当時の松根油製造の詳しい記録が残っており、、「全村をあげて松根赤たすき」、「掘って蒸して送れ」又「200本の松で航空機が1時間飛ぶことができる」等のスロ-ガンも記録されています。懐かしや! この号令。想い出します。
★ なんだかうれしい気分になりました。
戦争中、闘うにも石油がなくて戦闘機も飛ばせない。窮余の一策として考案された松根油。それが平和の時代になって、バイオ燃料開発の最先端で新しい世界を開きつつあったのです。「戦争と平和」・・・改めて、その皮肉な関係に思いをいたしました。
★ 私は、戦争末期には、日本の戦闘機は、この「ショーコンユ」で飛んでいた、と、信じ切っていましたが、今度の調査で、実は、全く役に立たず、残った多量の松根油は、漁業用に転用されていたことが分かりました。
★ でも、65年を経た今、その「ショーコンユ」が、新素材「パインケミカル」に変身し、新しい未来を拓くのに役だっているのですね。 飛行機は飛ばなかったけれど・・・《必要は、発明の母》・・・恩師の教えの、その真実を、今、思い出します。必要に迫られた人間の知恵は素晴らしい能力を発揮するものですね。
★ このレポートを、昔、ご一緒に、松根を掘った経験のある”昭和ヒトケタ”族のみなさんに捧げたいと思います。私たちの努力は、決してムダではありませんでした。
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**** ご挨拶 **** ブログ【傘寿を生きるロマン日記】公開に当たって
**** お願い **** 【傘寿の知憲運動】 是非、一度、ご披見ください
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★ 早速、出かけて、見て来ました。懐かしや! 懐かしや!
間違いなく、それは、太平洋戦争の末期、戦闘機の燃料が不足し、急遽、全国の山林にある松の切り株を掘り起こして作った油、「松根油」でした。
★ 年寄りや国防婦人会の女性、さらには小中学生も動員されて切り株の根を掘り出す作業が全国で始まったのです。鍬やスコップなどを用いてすべて手堀り。半日かけてようやく一つの松の根を掘り起こすような重労働でした。
★ 《200本掘れば、飛行機は1時間飛べる》と、追いまくられた号令を覚えています。当時、私は13歳。高等小学校の1年生、今の中学1年生でしたが、動員され、一所懸命、掘りました。ちょっと年上の年齢の志願兵だった乙種予科練生の指導を受けながらスコップで掘り起こしました。
★ 掘り起こした切り株の根は細かい割木にして 工場に送られ、釜にいれて蒸します。揮発分を冷却すると”松根原油”になるのです。その工場も一度、見学したこともありました。当時、これを指導した森滝先生のコトバを今も覚えています。
《必要は発明の母だ。石油が無くとも、戦闘機は飛ぶ!》**********
★ ソウだった! 軍用機の燃料が不足し、「ショウコンユ」で戦争を闘った時代があった。飛行機を飛ばせるほど良質のバイオ燃料は、既に62年も前の昭和19年から20年にかけて開発されていて実用化していた・・・。そんな思いが甦って来ました。
★ 化石燃料の枯渇が心配されている今、救世主になるのでは?・・・・俄然、興味が湧いて、調べてみました。すると、「ハリマ化成株式会社」という会社がパインケミカルの研究を基に機能性樹脂、製紙用薬品、電子材料の開発を進めていることが分かりました。あの”松根油”が「パインケミカル」に名を変えて、すでに多方面の商品開発に実用化されているのです。
★ この会社のホームページによりますと・・・
パインは「松」、ケミカルは「化学」であり、パインケミカルは、松の木から採れるロジン(松脂)、トール油、テレピン油などの有用な化学物質を扱う「松の化学」のことです。と、あります。正に「松根油」のことです。
なかでも松脂は旧約聖書のノアの箱舟の話にもでてくるように、紀元前より水漏れ防止剤に使われたり、古代ギリシャでは照明や宗教的儀式に使用されるなど、古来から人々の生活にさまざまな形で利用されてきました。
松は石炭や石油とは違い、自然との調和の中で植林により再生産できる尽きることのない資源です。我々人類は、紀元前から工業化が進んだ現在に至るまで、この自然の恵みを享受し、さまざまな形で利用しくらしに役立ててきました。
★ ビックリしました。この会社では、既にこの「松脂」(ロジン)を使って兵庫県加古川製造所のバイオマス発電事業で自然環境型事業を実用化しているのです。その研究と実用化はどこまで進んでいるのか?
★ 研究開発の現況を示したページを開きますと
★ 一覧、思わず息を呑むほどスゴイ!
《ハリマ化成は「自然の恵みをくらしに活かす」を基本理念に、先進の技術で様々な製品をつくり、人々のくらしに貢献しています。》と、誇らしく、宣言していますが、本当にバイオ研究とその実用化への取り組みは、ここまで進んでいるのですね。
★ この会社は、戦後すぐ、兵庫県加古川市に誕生した「播磨化成工業」が発展したものだそうですが、戦争中に開発された「松根油」に目をつけて、ひたすら樹脂化学の実用化研究を続けてきて現在、従業員769人 売り上げ355億円(いずれも2007年3月期)の中堅企業に育ちました。
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★ もちろん、同社のメイン商品である「松脂」(ロジン)の原点「松根油」の紹介もあります。「パインケミカル」のページに 「松根油(しょうこんゆ)を訪ねて」 という楽しい読み物もありました。岐阜県明宝村立博物館の訪問記です。
★ 当時の松根油製造の詳しい記録が残っており、、「全村をあげて松根赤たすき」、「掘って蒸して送れ」又「200本の松で航空機が1時間飛ぶことができる」等のスロ-ガンも記録されています。懐かしや! この号令。想い出します。
★ なんだかうれしい気分になりました。
戦争中、闘うにも石油がなくて戦闘機も飛ばせない。窮余の一策として考案された松根油。それが平和の時代になって、バイオ燃料開発の最先端で新しい世界を開きつつあったのです。「戦争と平和」・・・改めて、その皮肉な関係に思いをいたしました。
★ 私は、戦争末期には、日本の戦闘機は、この「ショーコンユ」で飛んでいた、と、信じ切っていましたが、今度の調査で、実は、全く役に立たず、残った多量の松根油は、漁業用に転用されていたことが分かりました。
★ でも、65年を経た今、その「ショーコンユ」が、新素材「パインケミカル」に変身し、新しい未来を拓くのに役だっているのですね。 飛行機は飛ばなかったけれど・・・《必要は、発明の母》・・・恩師の教えの、その真実を、今、思い出します。必要に迫られた人間の知恵は素晴らしい能力を発揮するものですね。
★ このレポートを、昔、ご一緒に、松根を掘った経験のある”昭和ヒトケタ”族のみなさんに捧げたいと思います。私たちの努力は、決してムダではありませんでした。
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**** ご挨拶 **** ブログ【傘寿を生きるロマン日記】公開に当たって
**** お願い **** 【傘寿の知憲運動】 是非、一度、ご披見ください
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by zenmz
| 2010-09-09 00:02
| 現代社会論