2005年 10月 20日
【5168】 ねつ造記事を如何に防ぐか? |
【同文縦書】(PDFファイル8Kb)
★第58回新聞大会が神戸市で開かれ、18日午後、同市ポートピアホテルで行われたパネルディスカッションでは、(【5157】朝日新聞の協会賞とモラル・ハザー)でも取り上げた朝日新聞の情報ねつ造事件が論じられ、「署名記事を書いていたら、(問題は)起きなかったのではないか」など多様な意見が出た、と、毎日新聞の坂口記者が書いています。
★そういう意見もあったかも知れぬが、この記事、ちょっと、我田引水のきらいが・・・・。と、言うのも、この発言は毎日新聞の社長が述べたコメントです。毎日新聞は、20年も前から、山内大介と言う当時の社長の方針で、掲載記事には原則として執筆記者の署名を入れることにしています。
★自社スタンスですべて問題が解決するかのようなまとめぶり、ちょっと内輪向けの提灯記事のような気がしないでもありません。が、まあ、どこの新聞もよくやるテです。とがめ立てする気はありませんが、「そんな安易なことで記者のデッチアゲ記事がなくなるものではない」と言うのが私の率直な印象です。
★私は31年、新聞記者をしましたが、20年前に定年で、その職を引退しました。その後は、取材される側で何度か、新聞に”銭本”名発の記事を書かれました。大学での社会福祉専門家としてのコメント、地域・自治会長としての意見が大半でした。その経験のすべてを通じて言えることは、「新聞はウソを書く」です。それは、自分自身が体験して初めて見えた”驚き”でした。
★先ず、電話取材です。事件が起こると、電話が掛かってきます。「○×▼◇のような事件が起こりました。フクシの立場からコメントを」 翌日、言いもしなかったコメントが出て、私の肩書きと名前が出ています。抗議の電話を入れると、「お話しの内容をそのようにまとめました」 後は、「言葉のニュアンスではですね・・・・・」 根負けするまで続きます。
★自治会長としてマスコミに向かい合う時は、それ以上に不愉快でした。ほとんどの場合、企画物。取材交渉の段階から先ず、「書いてやってる」というナメタ態度です。こちらがマスコミ出身者と分かると急に慇懃鄭重になる、その落差の激しいこと。出来上がった記事に自分が利用されている不快感ばかり。それらの記事に満足したことはありません。取材の前に物語は出来上がっているのです。
★一度、激怒したことがありました。12.3年前のことです。こともあろうに相手は、私の古巣『M新聞』の地方版。 「警官が住民をねじ伏せケガ」の大見出し記事がデカデカと出ました。ただ、そのトラブルを終始、見ていた付近の住民が自治会長である私の所に「記事は逆だ」と言ってきました。
★事実は、酒を飲んだその住民が道路に大の字になり往来妨害をしたので、通報を受けて駆けつけた警官が立ち退くよう説得し始めた所、「オマエを辞めさせてやる。後悔するなよ」と、いきなり、自分で顔面を道路にこすりつけて顔面擦り傷だらけにし、大声で「警官にやられた、人権蹂躙だ」と大声をあげた、と言うのです。問題の住民は、”事件”を弁護士会に通報、知人の弁護士から、それを知ったM新聞記者が、訴状だけを見て記事にしたのです。
★会員である住民が起こした不祥事だけに自治会は慎重に慎重を重ねて協議しました。目撃者の証言は実に克明、だれが考えても真相は明らかです。何より貶められた警官が可哀想、と、自治会名で警察本部、裁判所等、関係筋に”事実”を通告し、M新聞にも記事訂正を求めました。しかし、M新聞岡山支局は、「取材元は信頼出来る」の一点張り。「現場に来て裏付けを取ったか」の私の質問にも「いちいちその必要ない」と突っぱねました。
★「これは??? いかん」
呆れた私は、本社の担当部長に電話し、「加害者を被害者とする誤報事件だ、訂正を」と、コトの次第を説明しました。が、ここでもビックリシタのは、担当部長は、ただ平謝りするだけ。「ここは何とか、あなたのお力でオサメテ・・・」 大激論になりましたが、結局、こちらがアホらしくなって根負けする形で矛先をおさめました。
★問題は、「マスコミ人間」に共通する傲慢さです。「書いてやる」に始まり、「書いてやったのに・・」に続き、「文句を言われる筋合いはない」となる。私も、取材される側になって初めて分かったことですが、最近の若い記者は現場を踏ます、警察・行政から貰い受け情報だけで記事を書いているケースが非常に多いようです。関連コメントに個人名が出る場合も、ほとんどが電話、という手軽さです。
★記事の基礎・基本は現場を踏む。これを怠る記者の指導が出来ていない。取材先からの間違いの指摘に誠実・真摯に向かわない。黒を白と言い含める詭弁を許す風潮。記者個々人の日常倫理にメスを入れて病根をえぐり出さねばダメ。事態はそこまで来ていると思います。
★ネックレスの強さは、その一番、弱いリンクの強さ・・・・チーム取材の時、我々の先輩・”鬼軍曹”は、それを口酸っぱく言って、手抜きを許しませんでした。記者訓練の原点をたたき込まねば、署名して見たところで、全くダメです。素養なき人間に署名などさせると、自己顕示のパフォーマンスを惹起しかねませんよ。
★第58回新聞大会が神戸市で開かれ、18日午後、同市ポートピアホテルで行われたパネルディスカッションでは、(【5157】朝日新聞の協会賞とモラル・ハザー)でも取り上げた朝日新聞の情報ねつ造事件が論じられ、「署名記事を書いていたら、(問題は)起きなかったのではないか」など多様な意見が出た、と、毎日新聞の坂口記者が書いています。
★そういう意見もあったかも知れぬが、この記事、ちょっと、我田引水のきらいが・・・・。と、言うのも、この発言は毎日新聞の社長が述べたコメントです。毎日新聞は、20年も前から、山内大介と言う当時の社長の方針で、掲載記事には原則として執筆記者の署名を入れることにしています。
★自社スタンスですべて問題が解決するかのようなまとめぶり、ちょっと内輪向けの提灯記事のような気がしないでもありません。が、まあ、どこの新聞もよくやるテです。とがめ立てする気はありませんが、「そんな安易なことで記者のデッチアゲ記事がなくなるものではない」と言うのが私の率直な印象です。
★私は31年、新聞記者をしましたが、20年前に定年で、その職を引退しました。その後は、取材される側で何度か、新聞に”銭本”名発の記事を書かれました。大学での社会福祉専門家としてのコメント、地域・自治会長としての意見が大半でした。その経験のすべてを通じて言えることは、「新聞はウソを書く」です。それは、自分自身が体験して初めて見えた”驚き”でした。
★先ず、電話取材です。事件が起こると、電話が掛かってきます。「○×▼◇のような事件が起こりました。フクシの立場からコメントを」 翌日、言いもしなかったコメントが出て、私の肩書きと名前が出ています。抗議の電話を入れると、「お話しの内容をそのようにまとめました」 後は、「言葉のニュアンスではですね・・・・・」 根負けするまで続きます。
★自治会長としてマスコミに向かい合う時は、それ以上に不愉快でした。ほとんどの場合、企画物。取材交渉の段階から先ず、「書いてやってる」というナメタ態度です。こちらがマスコミ出身者と分かると急に慇懃鄭重になる、その落差の激しいこと。出来上がった記事に自分が利用されている不快感ばかり。それらの記事に満足したことはありません。取材の前に物語は出来上がっているのです。
★一度、激怒したことがありました。12.3年前のことです。こともあろうに相手は、私の古巣『M新聞』の地方版。 「警官が住民をねじ伏せケガ」の大見出し記事がデカデカと出ました。ただ、そのトラブルを終始、見ていた付近の住民が自治会長である私の所に「記事は逆だ」と言ってきました。
★事実は、酒を飲んだその住民が道路に大の字になり往来妨害をしたので、通報を受けて駆けつけた警官が立ち退くよう説得し始めた所、「オマエを辞めさせてやる。後悔するなよ」と、いきなり、自分で顔面を道路にこすりつけて顔面擦り傷だらけにし、大声で「警官にやられた、人権蹂躙だ」と大声をあげた、と言うのです。問題の住民は、”事件”を弁護士会に通報、知人の弁護士から、それを知ったM新聞記者が、訴状だけを見て記事にしたのです。
★会員である住民が起こした不祥事だけに自治会は慎重に慎重を重ねて協議しました。目撃者の証言は実に克明、だれが考えても真相は明らかです。何より貶められた警官が可哀想、と、自治会名で警察本部、裁判所等、関係筋に”事実”を通告し、M新聞にも記事訂正を求めました。しかし、M新聞岡山支局は、「取材元は信頼出来る」の一点張り。「現場に来て裏付けを取ったか」の私の質問にも「いちいちその必要ない」と突っぱねました。
★「これは??? いかん」
呆れた私は、本社の担当部長に電話し、「加害者を被害者とする誤報事件だ、訂正を」と、コトの次第を説明しました。が、ここでもビックリシタのは、担当部長は、ただ平謝りするだけ。「ここは何とか、あなたのお力でオサメテ・・・」 大激論になりましたが、結局、こちらがアホらしくなって根負けする形で矛先をおさめました。
★問題は、「マスコミ人間」に共通する傲慢さです。「書いてやる」に始まり、「書いてやったのに・・」に続き、「文句を言われる筋合いはない」となる。私も、取材される側になって初めて分かったことですが、最近の若い記者は現場を踏ます、警察・行政から貰い受け情報だけで記事を書いているケースが非常に多いようです。関連コメントに個人名が出る場合も、ほとんどが電話、という手軽さです。
★記事の基礎・基本は現場を踏む。これを怠る記者の指導が出来ていない。取材先からの間違いの指摘に誠実・真摯に向かわない。黒を白と言い含める詭弁を許す風潮。記者個々人の日常倫理にメスを入れて病根をえぐり出さねばダメ。事態はそこまで来ていると思います。
★ネックレスの強さは、その一番、弱いリンクの強さ・・・・チーム取材の時、我々の先輩・”鬼軍曹”は、それを口酸っぱく言って、手抜きを許しませんでした。記者訓練の原点をたたき込まねば、署名して見たところで、全くダメです。素養なき人間に署名などさせると、自己顕示のパフォーマンスを惹起しかねませんよ。
by zenmz
| 2005-10-20 00:00