2005年 12月 29日
【5236】 我が町から福祉が消える時 |
★ 今日は、ちょっと、カタイお話しをさせてください。
来年の話になりますが、20006年4月から「高齢者虐待防止法」が施行されます。自民党の一部に慎重論があり、成立が危ぶまれていたのですが、前国会閉会前に調整が出来て、参院本会議では全会一致で可決、成立しました。
★ この法律は、65歳以上の高齢者が虐待された事実を発見した家族や施設職員らは市町村へ通報する義務を定め、通報を受けた市町村長はお年寄りの自宅や入所施設に立ち入り調査し、警察署長に援助を求めることも可能。また、市町村長や施設長は、虐待をした家族などの養護者と、虐待を受けたお年寄りの面会を制限できる規定も盛り込んだかなり強力なものです。
★ 取り締まる「高齢者虐待」は、かなり広範で、陰湿なつぎのような行為をいいます。
● 身体的な虐待(殴る、蹴る、つねるなどの暴行で骨折したりアザなどの傷跡ができた場合や、本人の意思に反して身体を拘束されるケース)
● 性的な虐待(夫婦間も含めて、性的な暴力や”いたずら”をされるケース)
● 心理的な虐待(言葉による脅迫や侮辱などの暴力行為、また故意に無視し、孤立させられて心理的に不安定に陥っているケース)
● 経済的な虐待(本人の意思に反して、年金などの現金を渡さず、取り上げて使用したり、不動産を無断で処分されるようなケース)
● 世話の放棄(必要な介護の拒否したり、必要な医療や食事の提供制限などでして健康状態が損なうまで放置したり、理不尽な火気器具の使用禁止するなど生活上の不合理な制限を加える。また戸外への締め出しなど意図的に健康の維持や日常生活への援助をしないケース)
(以上、いずれもカッコ内は例示)
★ もう十数年も前から、この問題に目を留めて、要援護、要介護の高齢者保護法制の必要を訴えてきた「日本高齢者虐待防止センター」の代表、田中荘司さん(日本大学教授)の調査によりますと、加害者の殆どが、こうした高齢者に一番、近い配偶者や子ども、それに施設職員だといいます。
★ 最近になってようやく生命・財産に大きく関わる悲惨な虐待がマスコミでも取り上げられて世間の注目を集めるようになりましたが、これまでは家庭内、あるいは、その延長線上にある施設内という、共に社会から隔絶した密室で行われており、被害者も「お世話になっている」負い目から自分を殺して我慢するけーすが殆どで、表沙汰になることも少なかったのです。
★ 大学で介護福祉の講義を担当した経験を持つ私には、この重要な法律の制定に逆行するように、この画期的な法律の先駆をなしたある町の条例が廃止された事実を、皆さんにお伝えして、その重要な意味をご一緒に考えていただきたいと思います。
★ 秋田県鷹巣町と言えば、老人福祉に携わる専門家は誰でも知っています。人口僅かに2万1500人の小さな町でしたが、早くから北欧から学んだ地域に大きく開放された老人施設を建設し、住民参加型の全く新しい理念に立った高齢者福祉を作り上げたことで有名です。
★ 福祉系大学・短大の授業では「これからの老人福祉のあり方のモデル」として取り上げられ、全国から福祉関係者が視察に押し掛けていました。全室個室の先駆的な施設に加えて、鷹巣町の福祉行政を有名にしたのは、高齢者の人権を守る「鷹巣町高齢者安心条例」の制定でした。内容は、今度の「高齢者虐待防止法」を先取りしたものと言えますが、制定当時は、国の法務・厚生行政も、とても踏み込めなかったものです。
★ この町条例は、「介護保険制度のもと、保険者たる鷹巣町は、高齢者の尊厳を守ることを最大の価値と考える。その証しとして、人権擁護の防波堤をここに築き、地方自治体に課せられた高齢者福祉行政の責務を全うするための礎石とする」と宣言し、例えば、痴呆性老人の介護に必要とされる「保護具」の使用は、その必要を申告して町長の許可をえなければならない、としています。
★ このように要介護老人の尊厳を最大限に保障しており、これまた全国の自治体に大きなインパクトを与えたのですが、これが本年、廃止されました。それは、町長が替わったことと、町村合併で新しく北秋田市に併合されたためですが、同時に「日本一の福祉の町」も消えました。その中核だった「ケアタウン公社」への補助金も打ち切られて経営難に直面したのです。
★ 高齢者虐待防止に国がやっと重い腰を上げ始めた時、その先駆をなした秋田県鷹巣町は町村合併で姿を消し、同時に国の法律のモデルになった「鷹巣町高齢者安心条例」は廃止。また、その先駆的モデル福祉を作り上げた「ケアタウン公社」への補助金も打ち切り。その論理は「民で出来ることは民で」と言うのですから、唖然とします。
★ 誰が見てもオカシイ。あの”日本一の鷹巣福祉”に何があったのか? 今、疑問の解明に二人の著名人立ち上がりました。岩波映画製作所で名を馳せた羽田澄子監督が、10年をかけてそのすべてを記録したドキュメント映画「あの鷹巣町の その後」 先月、第18回東京国際女性映画祭でお披露目上映し、今、制作元の「自由工房」が全国で、自主上映会を展開しています。
★ もう一人は、元朝日新聞記者で元大阪大学大学院教授をした大熊一夫さんが塾長となって始めた学習サークル「鷹巣福祉塾」 十数年前、高齢者の権利擁護の立場から新しい福祉行政を確立した前町長、岩川徹さんを代表に迎えて、”鷹巣福祉の盛衰”を徹底解明し、世論に訴えるといいます。
★ 私の町も町村合併で膨らみました。早速、始まったのが高齢者関係事業の整理。特にねらい打ちされているのが補助金です。「住民福祉は民で出来ること。民のことは民で」 あからさまに始まったこの小泉委曲の大合唱。あの”日本一を誇った鷹巣福祉”の命運を私たちもシッカリ検証したいものです。
来年の話になりますが、20006年4月から「高齢者虐待防止法」が施行されます。自民党の一部に慎重論があり、成立が危ぶまれていたのですが、前国会閉会前に調整が出来て、参院本会議では全会一致で可決、成立しました。
★ この法律は、65歳以上の高齢者が虐待された事実を発見した家族や施設職員らは市町村へ通報する義務を定め、通報を受けた市町村長はお年寄りの自宅や入所施設に立ち入り調査し、警察署長に援助を求めることも可能。また、市町村長や施設長は、虐待をした家族などの養護者と、虐待を受けたお年寄りの面会を制限できる規定も盛り込んだかなり強力なものです。
★ 取り締まる「高齢者虐待」は、かなり広範で、陰湿なつぎのような行為をいいます。
● 身体的な虐待(殴る、蹴る、つねるなどの暴行で骨折したりアザなどの傷跡ができた場合や、本人の意思に反して身体を拘束されるケース)
● 性的な虐待(夫婦間も含めて、性的な暴力や”いたずら”をされるケース)
● 心理的な虐待(言葉による脅迫や侮辱などの暴力行為、また故意に無視し、孤立させられて心理的に不安定に陥っているケース)
● 経済的な虐待(本人の意思に反して、年金などの現金を渡さず、取り上げて使用したり、不動産を無断で処分されるようなケース)
● 世話の放棄(必要な介護の拒否したり、必要な医療や食事の提供制限などでして健康状態が損なうまで放置したり、理不尽な火気器具の使用禁止するなど生活上の不合理な制限を加える。また戸外への締め出しなど意図的に健康の維持や日常生活への援助をしないケース)
(以上、いずれもカッコ内は例示)
★ もう十数年も前から、この問題に目を留めて、要援護、要介護の高齢者保護法制の必要を訴えてきた「日本高齢者虐待防止センター」の代表、田中荘司さん(日本大学教授)の調査によりますと、加害者の殆どが、こうした高齢者に一番、近い配偶者や子ども、それに施設職員だといいます。
★ 最近になってようやく生命・財産に大きく関わる悲惨な虐待がマスコミでも取り上げられて世間の注目を集めるようになりましたが、これまでは家庭内、あるいは、その延長線上にある施設内という、共に社会から隔絶した密室で行われており、被害者も「お世話になっている」負い目から自分を殺して我慢するけーすが殆どで、表沙汰になることも少なかったのです。
★ 大学で介護福祉の講義を担当した経験を持つ私には、この重要な法律の制定に逆行するように、この画期的な法律の先駆をなしたある町の条例が廃止された事実を、皆さんにお伝えして、その重要な意味をご一緒に考えていただきたいと思います。
★ 秋田県鷹巣町と言えば、老人福祉に携わる専門家は誰でも知っています。人口僅かに2万1500人の小さな町でしたが、早くから北欧から学んだ地域に大きく開放された老人施設を建設し、住民参加型の全く新しい理念に立った高齢者福祉を作り上げたことで有名です。
★ 福祉系大学・短大の授業では「これからの老人福祉のあり方のモデル」として取り上げられ、全国から福祉関係者が視察に押し掛けていました。全室個室の先駆的な施設に加えて、鷹巣町の福祉行政を有名にしたのは、高齢者の人権を守る「鷹巣町高齢者安心条例」の制定でした。内容は、今度の「高齢者虐待防止法」を先取りしたものと言えますが、制定当時は、国の法務・厚生行政も、とても踏み込めなかったものです。
★ この町条例は、「介護保険制度のもと、保険者たる鷹巣町は、高齢者の尊厳を守ることを最大の価値と考える。その証しとして、人権擁護の防波堤をここに築き、地方自治体に課せられた高齢者福祉行政の責務を全うするための礎石とする」と宣言し、例えば、痴呆性老人の介護に必要とされる「保護具」の使用は、その必要を申告して町長の許可をえなければならない、としています。
★ このように要介護老人の尊厳を最大限に保障しており、これまた全国の自治体に大きなインパクトを与えたのですが、これが本年、廃止されました。それは、町長が替わったことと、町村合併で新しく北秋田市に併合されたためですが、同時に「日本一の福祉の町」も消えました。その中核だった「ケアタウン公社」への補助金も打ち切られて経営難に直面したのです。
★ 高齢者虐待防止に国がやっと重い腰を上げ始めた時、その先駆をなした秋田県鷹巣町は町村合併で姿を消し、同時に国の法律のモデルになった「鷹巣町高齢者安心条例」は廃止。また、その先駆的モデル福祉を作り上げた「ケアタウン公社」への補助金も打ち切り。その論理は「民で出来ることは民で」と言うのですから、唖然とします。
★ 誰が見てもオカシイ。あの”日本一の鷹巣福祉”に何があったのか? 今、疑問の解明に二人の著名人立ち上がりました。岩波映画製作所で名を馳せた羽田澄子監督が、10年をかけてそのすべてを記録したドキュメント映画「あの鷹巣町の その後」 先月、第18回東京国際女性映画祭でお披露目上映し、今、制作元の「自由工房」が全国で、自主上映会を展開しています。
★ もう一人は、元朝日新聞記者で元大阪大学大学院教授をした大熊一夫さんが塾長となって始めた学習サークル「鷹巣福祉塾」 十数年前、高齢者の権利擁護の立場から新しい福祉行政を確立した前町長、岩川徹さんを代表に迎えて、”鷹巣福祉の盛衰”を徹底解明し、世論に訴えるといいます。
★ 私の町も町村合併で膨らみました。早速、始まったのが高齢者関係事業の整理。特にねらい打ちされているのが補助金です。「住民福祉は民で出来ること。民のことは民で」 あからさまに始まったこの小泉委曲の大合唱。あの”日本一を誇った鷹巣福祉”の命運を私たちもシッカリ検証したいものです。
by zenmz
| 2005-12-29 01:24