2006年 07月 10日
【6188】 「笑いと健康学会」発足に想う |
★ 「病気」は、「気を病む」と書きます。なかなか意味深長です。「病い」は、身体と心の密接な相乗作用と言いたいのですね。そう言われると、自分の生活史の中で、身に覚えのあることが次々と出てきます。「だから、こう言う考え方はどうだ」と、発想されたのが「笑いと健康」の相関性。これは医学的に有効な治療に応用出来そう、というので、「笑いと健康学会」という学会が誕生しました。
★ 昨日、東京・お茶の水の順天堂大学で第一回研究大会と設立総会を開いたのです。これを予報した読売新聞の記事(7月5日)によれば、研究大会の第1部では会長の澤田隆治・帝京平成大学教授が学会活動への期待と展望を述べ、その後、これまでの「笑いと健康」についての医学的な研究論文の系統的分析が報告される、となっています。先行諸論文の現時点の総まとめでしょうから、これが、今後の研究の土台になるのでしょう。
★ ユニークなのは第2部。「笑い」が身体にどのような作用をもたらすか、その効果について測定する公開実験が行われる。ここでは、参加者有志10人に「アクティブトレーサー」と呼ばれる特殊な装置を付け、日本喜劇人協会会長の大村崑氏の特別講演や映像を楽しんでもらい、その際の心拍を測定して自律神経系の活動状態をリアルタイムで解析して、さらにその結果を研究者が分析し、直ちに説明するという画期的な実験が行われる予定だ。と、あります。この学会は、資格は問わず、広く一般に公開されているそうで、私も是非、参加したい、と願ったのですが、なにぶん、遠方。ちょっと出かけるのも大層で、当日の研究成果のまとめが出るのを楽しみにしています。
★ 笑いがもたらす健康・・・
その実際を日常生活で日々、確認しながら生きているのは関西人特有の文化だと思います。言葉自体が笑いを誘う独特のニュアンスを秘めており、これが日常の会話の中で交錯し始めますと、不思議に緊張感をゆるめてくれる絶妙の効果を発揮します。ともかく我々老夫婦、「あばたもえくぼ」の時代から「あばたはあばた」並に正確に見え、挙げ句の果ては、「えくぼもあばた」に見えるこのごろになっても、何とか、保っているのも関西弁の「アホちゃうか」でお互い、煙幕をはって来たからだ、と思います。
★ 実は、私のふるさとである京都には、先ほど「京都笑科大学」が誕生しました。 ”笑い”を「楽しむだけでなく、人を楽しませる方法、技術の普及もめざす」のが目的。中心は、事務局長として会を切り回している京都外国語大教授の福井直秀さん(教育学専門) ”開学”すると、200人が”入学”したそうです。
★ この京都には一足先にNPO法人「京・ハハハハハ・笑いの会」が出来ています。食と笑いの集い、銭湯での落語会などを続けてもう3年になります。とにかく「暗い世を笑い飛ばそう」と、「統合で空いた市内小学校を活用して笑いの殿堂つくろうよ」を提言するなどなかなか意気盛んです。
★ ともかく、こうした動きの中で、「笑いと健康」を科学的、実証的に考えていく本格的な学会の誕生です。ユニークなのは、医療専門家だけでなく、お笑いのプロも多数、参加してしていること。例えば、発起人には医学・薬学関係の研究者ばかりでなく、あのお笑いの「吉本興業」の吉野伊佐男社長や、落語協会の三遊亭円歌会長、桂三枝・内海桂子・大村昆の各氏など、人気絶頂の落語家、漫才師、喜劇役者が多数、名を連ねていいます。
★ 早くも、免疫学、精神医学などの研究者の間では、笑いと同じ効果を持つ薬の開発、看護師、介護職の人々には、ジョークや手品に堪能な「笑いセラピスト」を養成するための笑い教育カリキュラムの開発・・などの取り組みテーマが挙がっているそうです。確かに「笑うと免疫力が高まり健康に良い」とは、いわれていますが、その基礎・臨床研究は未だ未着手。先ず、ここから・・・と免疫学専門家は張り切っているとか。
★ この他、期待されるのは、超高齢化社会の最も大切な課題である”健康長寿”の実現に「笑い」が良い影響を及ぼすのでは?・・・との期待を込めた仮説があります。笑いが体内の免疫力を高め、健康や性格形成などに意義があるであろう、との考え方は早くからありましたが、これまでは、その実験手法の確立の難しさ、再現性のあるデータが得られないなどの理由から、科学的根拠がある成果は出ていません。学会では、この問題にも積極的に取り組む、としています。
★ 「笑いと健康学会」の誕生・・・
私は、個人的に、この出来事に深い感慨を覚えます。”笑い”をめぐるこの大きな渦の巻き起こり、何か、陽気な"笑戦”が始まったようなにぎわいを感じます。
それがなぜ、感慨に結びつくのか? 実は、難病にかかった大学医学部の教授が、自らその治療に笑いが有効であることを信じ、自分自身が”笑いで難病克服”に立ち向かった記録を残しています。
アメリカの有力高級誌「サタデー・レビュー」の元編集長で、後、カリフォルニア州立大学医学部教授をなさったノーマン・カズンズ氏。実は、この方。私が直接、薫陶を受けた大先輩なのです。
★ 戦後間もなく、ジャーナリストとして広島入りし、そこで原爆で被爆し、ケロイドを残した若い女性の惨状を目にし、アメリカに連れて行き、治療した人道主義者。広島名誉市民として広島では知らぬ人はありません。
私は”原爆記者”として広島に勤務した現役時代に非常に懇意にしていただきました、(その記録は、こちらにございます。ご参照ください)
★ その闘病記は、5年前、岩波書店から『笑いと治癒力』(ノーマン・カズンズ著・松田銑訳)として公刊されています。著者のカズンズ氏は、晩年、『膠原病』になり闘病生活にはいりましたが、友人の主治医も匙を投げた難病。ここは、自分で病気を治そうと決意します。自らの病を内観の結果、見いだしたのは、病気と心の密接な関係、つまり病気を引き起こしたのは自分で、それを治す力(免疫)も自分の中にある。その治癒力を最大限に生かす環境を自分の身体と心に与えてやる為に、笑いが極めて有効、と気づくのです。
★ もちろん、カズンズ氏は、笑いだけで病気が治る、とはいっていません。でも「病気は”気”を”病む”。自分が起こしていること。それを直すのは自分に備わっている治癒力。そして、病変のある膠原線維に必要なコラーゲンを生成させるために、ビタミンCを大量摂取しつつ、笑い効果を併用したのです。
★ 自らの病気を内観しながら、現代医学が及ばない『膠原病』という難病の病気の機序を解明し、その再生のため、自分の身体に備わっている自然治癒力の一つに”笑い”があることを見いだしたのでした。まさに、「笑いと健康学会」の目指す学問の先駆的業績といっていいものでしょう。深い感動を覚えます。
★ 昨日、東京・お茶の水の順天堂大学で第一回研究大会と設立総会を開いたのです。これを予報した読売新聞の記事(7月5日)によれば、研究大会の第1部では会長の澤田隆治・帝京平成大学教授が学会活動への期待と展望を述べ、その後、これまでの「笑いと健康」についての医学的な研究論文の系統的分析が報告される、となっています。先行諸論文の現時点の総まとめでしょうから、これが、今後の研究の土台になるのでしょう。
★ ユニークなのは第2部。「笑い」が身体にどのような作用をもたらすか、その効果について測定する公開実験が行われる。ここでは、参加者有志10人に「アクティブトレーサー」と呼ばれる特殊な装置を付け、日本喜劇人協会会長の大村崑氏の特別講演や映像を楽しんでもらい、その際の心拍を測定して自律神経系の活動状態をリアルタイムで解析して、さらにその結果を研究者が分析し、直ちに説明するという画期的な実験が行われる予定だ。と、あります。この学会は、資格は問わず、広く一般に公開されているそうで、私も是非、参加したい、と願ったのですが、なにぶん、遠方。ちょっと出かけるのも大層で、当日の研究成果のまとめが出るのを楽しみにしています。
★ 笑いがもたらす健康・・・
その実際を日常生活で日々、確認しながら生きているのは関西人特有の文化だと思います。言葉自体が笑いを誘う独特のニュアンスを秘めており、これが日常の会話の中で交錯し始めますと、不思議に緊張感をゆるめてくれる絶妙の効果を発揮します。ともかく我々老夫婦、「あばたもえくぼ」の時代から「あばたはあばた」並に正確に見え、挙げ句の果ては、「えくぼもあばた」に見えるこのごろになっても、何とか、保っているのも関西弁の「アホちゃうか」でお互い、煙幕をはって来たからだ、と思います。
★ 実は、私のふるさとである京都には、先ほど「京都笑科大学」が誕生しました。 ”笑い”を「楽しむだけでなく、人を楽しませる方法、技術の普及もめざす」のが目的。中心は、事務局長として会を切り回している京都外国語大教授の福井直秀さん(教育学専門) ”開学”すると、200人が”入学”したそうです。
★ この京都には一足先にNPO法人「京・ハハハハハ・笑いの会」が出来ています。食と笑いの集い、銭湯での落語会などを続けてもう3年になります。とにかく「暗い世を笑い飛ばそう」と、「統合で空いた市内小学校を活用して笑いの殿堂つくろうよ」を提言するなどなかなか意気盛んです。
★ ともかく、こうした動きの中で、「笑いと健康」を科学的、実証的に考えていく本格的な学会の誕生です。ユニークなのは、医療専門家だけでなく、お笑いのプロも多数、参加してしていること。例えば、発起人には医学・薬学関係の研究者ばかりでなく、あのお笑いの「吉本興業」の吉野伊佐男社長や、落語協会の三遊亭円歌会長、桂三枝・内海桂子・大村昆の各氏など、人気絶頂の落語家、漫才師、喜劇役者が多数、名を連ねていいます。
★ 早くも、免疫学、精神医学などの研究者の間では、笑いと同じ効果を持つ薬の開発、看護師、介護職の人々には、ジョークや手品に堪能な「笑いセラピスト」を養成するための笑い教育カリキュラムの開発・・などの取り組みテーマが挙がっているそうです。確かに「笑うと免疫力が高まり健康に良い」とは、いわれていますが、その基礎・臨床研究は未だ未着手。先ず、ここから・・・と免疫学専門家は張り切っているとか。
★ この他、期待されるのは、超高齢化社会の最も大切な課題である”健康長寿”の実現に「笑い」が良い影響を及ぼすのでは?・・・との期待を込めた仮説があります。笑いが体内の免疫力を高め、健康や性格形成などに意義があるであろう、との考え方は早くからありましたが、これまでは、その実験手法の確立の難しさ、再現性のあるデータが得られないなどの理由から、科学的根拠がある成果は出ていません。学会では、この問題にも積極的に取り組む、としています。
★ 「笑いと健康学会」の誕生・・・
私は、個人的に、この出来事に深い感慨を覚えます。”笑い”をめぐるこの大きな渦の巻き起こり、何か、陽気な"笑戦”が始まったようなにぎわいを感じます。
それがなぜ、感慨に結びつくのか? 実は、難病にかかった大学医学部の教授が、自らその治療に笑いが有効であることを信じ、自分自身が”笑いで難病克服”に立ち向かった記録を残しています。
アメリカの有力高級誌「サタデー・レビュー」の元編集長で、後、カリフォルニア州立大学医学部教授をなさったノーマン・カズンズ氏。実は、この方。私が直接、薫陶を受けた大先輩なのです。
★ 戦後間もなく、ジャーナリストとして広島入りし、そこで原爆で被爆し、ケロイドを残した若い女性の惨状を目にし、アメリカに連れて行き、治療した人道主義者。広島名誉市民として広島では知らぬ人はありません。
私は”原爆記者”として広島に勤務した現役時代に非常に懇意にしていただきました、(その記録は、こちらにございます。ご参照ください)
★ その闘病記は、5年前、岩波書店から『笑いと治癒力』(ノーマン・カズンズ著・松田銑訳)として公刊されています。著者のカズンズ氏は、晩年、『膠原病』になり闘病生活にはいりましたが、友人の主治医も匙を投げた難病。ここは、自分で病気を治そうと決意します。自らの病を内観の結果、見いだしたのは、病気と心の密接な関係、つまり病気を引き起こしたのは自分で、それを治す力(免疫)も自分の中にある。その治癒力を最大限に生かす環境を自分の身体と心に与えてやる為に、笑いが極めて有効、と気づくのです。
★ もちろん、カズンズ氏は、笑いだけで病気が治る、とはいっていません。でも「病気は”気”を”病む”。自分が起こしていること。それを直すのは自分に備わっている治癒力。そして、病変のある膠原線維に必要なコラーゲンを生成させるために、ビタミンCを大量摂取しつつ、笑い効果を併用したのです。
★ 自らの病気を内観しながら、現代医学が及ばない『膠原病』という難病の病気の機序を解明し、その再生のため、自分の身体に備わっている自然治癒力の一つに”笑い”があることを見いだしたのでした。まさに、「笑いと健康学会」の目指す学問の先駆的業績といっていいものでしょう。深い感動を覚えます。
by zenmz
| 2006-07-10 00:10
| 現代社会論