2006年 08月 20日
【6223] ユビキタス時代の『モバイルSNS』 |
★ 『ソーシャル・ネット・サービス』(SNS)の先駆者、GREEが携帯電話のKDDIと提携して「ケイタイSNS」を本格的に構築することになりました。これからはパソコンではなくモバイル、特にケイタイの時代、との認識です。
[6221] mixi が東京証券取引所マザーズ市場に上場に続き、この問題を、考えてみました。
★ 日常生活での人と人の出会いは、全く予測できない不思議の連鎖です。ふと旅先で出会った見知らぬ人と話していると、その人の知人と、自分の知人が親友だったり、また時には、遠縁の親戚同士だった、というような機縁も再三、経験します。そうした感動を綴った随想に出会うと、説明できない機縁の不思議を「見えざる力の導き」などと宗教的な意味付けをする場合も多いようです。
★ そこに科学のメスを入れたアメリカの学者がいます。ハーバード大学の心理学者、Dr.Stanley Milgram。1967年、ミルグラム教授はネブラスカ州オマハの住人160人を無作為に選んで、その全員に
「同封した写真の人物はボストン在住の株式仲買人です。この顔と名前の人物をご存知でしたらその人の元へこの手紙をお送り下さい。この人を知らない場合は貴方の住所氏名を書き加えた上で、貴方の友人の中で知っていそうな人にこの手紙を送って下さい」
という内容の手紙を送りました。その結果42通(26.25%)が実際に届き、届くまでに経た人数は平均5.83人であった、ことを確認しました。
★ これが、統計学で有名な「六次の隔たり(ろくじのへだたり)」理論です。つまり、人間は、自分の知り合いを6人以上介すと世界中の人々と間接的な知り合いになれる、という法則です。別名「スモール・ワールド現象」とも言うそうですが、私たちの日常でも「本当に世間って狭いね」と感嘆する場面で、実際に経験しています。
★ 理屈はともかく、私たちは、漠然と、そのことは知っていました。しばしば、問題になって来たのが、「不幸の手紙」や「ねずみ講商法」ですね。新興宗教も、この理屈で信者に布教を督励することがよくあります。しかし、これこそインターネット時代の「出会い市場」のプラットフォームになる、と、直感した天才が現れました。
★ 「六次の隔たり(ろくじのへだたり)」理論の英語「Six Degrees of Separations」の”gree”を抜いて、インターネット上に「友の友、その友の友」と結んでいって新たな友人関係を創り出す「閉鎖的な」コミュニティ型を構築しようと考えたのです。ネットに新しい交流の場を創り、そこに通販ビジネスを乗せるとビジネスになる、という発想。それを実行したのが田中良和さん。当時、『楽天』に在籍していましたが、平成16(2004)年2月に個人でSNS「GREE」を立ち上げ、たちまち10万人以上のユーザーを集め、退職して「グリー株式会社」を設立しました。同年12月7日のこと。未だ2年も経っていません。
★ その後、「ソーシャル・ネット・サービス」(SNS)は急成長を始めました。ミクシィの手がける「mixi」が最大手に大化けし、静観を構えていた、ヤフーも、ソニーも大手企業が、次々と参入し始め、経済界も、もう無視できない一大市場に成長しつつあります。ところが「GREE」は、そうしたSNS内のシェア争いに目もくれず、[Web20]を見据えた新たな展開構想を温めていました。
★ 去る7月31日、それが公表されました。「携帯電話と結んだSNSを本格的に展開する」と言うのです。構想の中身を知って、多くの人がビックリしました。如何に注目を集めているといっても「GREE」はいわば「田中商店」という従業員18人の個人企業。それが資本金1,418億5100万円、従業員1万人の大企業「KDDI」と提携するのです。
★ 提携に当たり、「KDDI」は、「SNS (ソーシャルネットワーキングサイト) をはじめ、インターネット上で拡大しつつあるWeb2.0サービスに着目し、パーソナルツールである携帯電話における可能性について検討してきました。その一環として、PC/携帯電話のシームレスなSNSの提供により、お客様同士が安心してご利用いただけるコミュニケーションの実現およびSNSから広がるデジタルコンテンツやEコマースの発展を目指しています」と、その趣旨を公表し、
★ 一方、「GREE」は、これからはSNSもPC中心ではなく、「GREEモバイル」の時代である、とし、「今後急成長が予想されるモバイル展開へも積極的に取組み、サービスの拡充に努める。KDDIのコンテンツ事業やEC事業とグリーのSNS事業に関するそれぞれの顧客基盤・ブランド・事業ノウハウなどを融合し、携帯電話の強みを活かしたSNSにおけるサービスの企画・運営を共同で検討していく」と、その目的を述べています。
★ SNSだけを取り上げると、最大手は「ミキシー」(mixi) 現在の会員数はmixiが500万人超えに対し、「GREE」は、35万人、しかもその差は開くばかりの劣勢に立たされています。しかし、「GREE」の田中社長は、「これからはモバイル。そのためにKDDIと組むことにした。業務提携だけでなく、資本提携もし、キチンとスクラムを組んで、新しいモバイルSNSを構築する。ケイタイとSNS・・・これから、人と人を結ぶツールは、コレです。パソコンではない」
★ 確かに卓見だと思います。「博報堂生活総研」の調査によると、日本の10代男子が携帯電話に登録している電話番号数は平均、71.66人だそうです。24時間、片時も離さないケイタイ通話・・・「●△◇◎のメシ美味い」「この本、メチャ面白」などとメモまくる親指発信。その多くは、既にアフリエイトでちゃっかり稼ぐ方法も身につけているそうです。その情報伝播力、宣伝効果は、とても活字印刷の広告が太刀打ちできるものではありません。
★ 「モバイルSNS」 ケイタイは音声、文字情報の伝達段階から静止画、動画、音楽、テレビなど総合的な情報伝達手段になりつつあります。誰でも、何時でも、何処でも・・・・インターネットは、ユビキタス時代。それを動かすツールはもはやパソコンではなく、モバイル・・・その主役は携帯電話・・・・確かに、時代は全く新しい時代に突入しつつあります。
★ 私は、固定電話時代から、電話大嫌い人間で、未だに電話で話をするのがイヤで、「直ぐ、素っ気なく切ってしまう」と叱られています。勿論、ケイタイなど持つ気にもなりません。が、そうこう言っておれない情報革命が押し寄せて来ているのを実感します。
★ しかし・・・・・・
やはり、抜けきらぬ不安感が漂います。何か、その先に悪いことが起こるような予感がしてならない。それが拭いきれないのです。それは、「六次の隔たり(ろくじのへだたり)」理論に対する信憑性と、言ってもいいと思います。「六次の隔たり(ろくじのへだたり)」理論といえば、大層に聞こえますが、人間の知恵・英知の世界では既に誰でも知っている事柄です。「不幸の手紙」や「ネズミ講」・・・・誰でも一度は、生活の回りで経験しました。でも、ウサン臭い、と退けています。
★ ユビキタス時代の幕開けに「ケイタイSNS」などと、”新文明開化”の道筋を整え、時代の先端を行くモバイル機器を持たされて、「六次の隔たり」理論を聴かされても、私は、やはり、「それって? ”不幸の手紙”や”ネズミ講”と、何処がちがうの?」と聞き質したいのです。金儲けの絡む「六次の隔たり」は、必ず、7次で破綻します。ビジネスには向かない。ビジネスの立場から見るなら、これは、警告の理論です。
★ でも、若い人は、元気ですね。怖いモノ知らずで突っ走ります。
「ブログやSNS・・ケイタイも、やってみないとわからない。失敗するから・・・と、2の足踏むと、最初から敗者。時代の変化を読み取り、新しい市場を開拓した者が勝ち。大変動の時代は、パイオニア精神が必要です。今の可能性は、モバイル。挑戦しないテはありません」
★ 確かに若者たちの意見、一理、あります。自分の生活史のなかにある、おぞましい、「不幸の手紙」や「ネズミ講」の理屈と、それで人を巻き込む”人脈”作りの手口。あまりにも類似性が多く、ついつい、口出ししてしまいます。確かに危機管理ばかり言っておっては発展はありません。
★ まあしかし、何時の世にあっても、人付き合いは、対面の礼から。お互い顔を合わせて名乗り合い、十分、自らを知ってもらった上での交際の始まり。この「礼」の一点を欠かすことなく、新しいお出会いの感動を満喫させて頂きたい。残り少ない老後人生を豊かに実らせたいと思っています。
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【6206】 アメリカが未成年者のSNS利用規制へ
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★ 日常生活での人と人の出会いは、全く予測できない不思議の連鎖です。ふと旅先で出会った見知らぬ人と話していると、その人の知人と、自分の知人が親友だったり、また時には、遠縁の親戚同士だった、というような機縁も再三、経験します。そうした感動を綴った随想に出会うと、説明できない機縁の不思議を「見えざる力の導き」などと宗教的な意味付けをする場合も多いようです。
★ そこに科学のメスを入れたアメリカの学者がいます。ハーバード大学の心理学者、Dr.Stanley Milgram。1967年、ミルグラム教授はネブラスカ州オマハの住人160人を無作為に選んで、その全員に
「同封した写真の人物はボストン在住の株式仲買人です。この顔と名前の人物をご存知でしたらその人の元へこの手紙をお送り下さい。この人を知らない場合は貴方の住所氏名を書き加えた上で、貴方の友人の中で知っていそうな人にこの手紙を送って下さい」
という内容の手紙を送りました。その結果42通(26.25%)が実際に届き、届くまでに経た人数は平均5.83人であった、ことを確認しました。
★ これが、統計学で有名な「六次の隔たり(ろくじのへだたり)」理論です。つまり、人間は、自分の知り合いを6人以上介すと世界中の人々と間接的な知り合いになれる、という法則です。別名「スモール・ワールド現象」とも言うそうですが、私たちの日常でも「本当に世間って狭いね」と感嘆する場面で、実際に経験しています。
★ 理屈はともかく、私たちは、漠然と、そのことは知っていました。しばしば、問題になって来たのが、「不幸の手紙」や「ねずみ講商法」ですね。新興宗教も、この理屈で信者に布教を督励することがよくあります。しかし、これこそインターネット時代の「出会い市場」のプラットフォームになる、と、直感した天才が現れました。
★ 「六次の隔たり(ろくじのへだたり)」理論の英語「Six Degrees of Separations」の”gree”を抜いて、インターネット上に「友の友、その友の友」と結んでいって新たな友人関係を創り出す「閉鎖的な」コミュニティ型を構築しようと考えたのです。ネットに新しい交流の場を創り、そこに通販ビジネスを乗せるとビジネスになる、という発想。それを実行したのが田中良和さん。当時、『楽天』に在籍していましたが、平成16(2004)年2月に個人でSNS「GREE」を立ち上げ、たちまち10万人以上のユーザーを集め、退職して「グリー株式会社」を設立しました。同年12月7日のこと。未だ2年も経っていません。
★ その後、「ソーシャル・ネット・サービス」(SNS)は急成長を始めました。ミクシィの手がける「mixi」が最大手に大化けし、静観を構えていた、ヤフーも、ソニーも大手企業が、次々と参入し始め、経済界も、もう無視できない一大市場に成長しつつあります。ところが「GREE」は、そうしたSNS内のシェア争いに目もくれず、[Web20]を見据えた新たな展開構想を温めていました。
★ 去る7月31日、それが公表されました。「携帯電話と結んだSNSを本格的に展開する」と言うのです。構想の中身を知って、多くの人がビックリしました。如何に注目を集めているといっても「GREE」はいわば「田中商店」という従業員18人の個人企業。それが資本金1,418億5100万円、従業員1万人の大企業「KDDI」と提携するのです。
★ 提携に当たり、「KDDI」は、「SNS (ソーシャルネットワーキングサイト) をはじめ、インターネット上で拡大しつつあるWeb2.0サービスに着目し、パーソナルツールである携帯電話における可能性について検討してきました。その一環として、PC/携帯電話のシームレスなSNSの提供により、お客様同士が安心してご利用いただけるコミュニケーションの実現およびSNSから広がるデジタルコンテンツやEコマースの発展を目指しています」と、その趣旨を公表し、
★ 一方、「GREE」は、これからはSNSもPC中心ではなく、「GREEモバイル」の時代である、とし、「今後急成長が予想されるモバイル展開へも積極的に取組み、サービスの拡充に努める。KDDIのコンテンツ事業やEC事業とグリーのSNS事業に関するそれぞれの顧客基盤・ブランド・事業ノウハウなどを融合し、携帯電話の強みを活かしたSNSにおけるサービスの企画・運営を共同で検討していく」と、その目的を述べています。
★ SNSだけを取り上げると、最大手は「ミキシー」(mixi) 現在の会員数はmixiが500万人超えに対し、「GREE」は、35万人、しかもその差は開くばかりの劣勢に立たされています。しかし、「GREE」の田中社長は、「これからはモバイル。そのためにKDDIと組むことにした。業務提携だけでなく、資本提携もし、キチンとスクラムを組んで、新しいモバイルSNSを構築する。ケイタイとSNS・・・これから、人と人を結ぶツールは、コレです。パソコンではない」
★ 確かに卓見だと思います。「博報堂生活総研」の調査によると、日本の10代男子が携帯電話に登録している電話番号数は平均、71.66人だそうです。24時間、片時も離さないケイタイ通話・・・「●△◇◎のメシ美味い」「この本、メチャ面白」などとメモまくる親指発信。その多くは、既にアフリエイトでちゃっかり稼ぐ方法も身につけているそうです。その情報伝播力、宣伝効果は、とても活字印刷の広告が太刀打ちできるものではありません。
★ 「モバイルSNS」 ケイタイは音声、文字情報の伝達段階から静止画、動画、音楽、テレビなど総合的な情報伝達手段になりつつあります。誰でも、何時でも、何処でも・・・・インターネットは、ユビキタス時代。それを動かすツールはもはやパソコンではなく、モバイル・・・その主役は携帯電話・・・・確かに、時代は全く新しい時代に突入しつつあります。
★ 私は、固定電話時代から、電話大嫌い人間で、未だに電話で話をするのがイヤで、「直ぐ、素っ気なく切ってしまう」と叱られています。勿論、ケイタイなど持つ気にもなりません。が、そうこう言っておれない情報革命が押し寄せて来ているのを実感します。
★ しかし・・・・・・
やはり、抜けきらぬ不安感が漂います。何か、その先に悪いことが起こるような予感がしてならない。それが拭いきれないのです。それは、「六次の隔たり(ろくじのへだたり)」理論に対する信憑性と、言ってもいいと思います。「六次の隔たり(ろくじのへだたり)」理論といえば、大層に聞こえますが、人間の知恵・英知の世界では既に誰でも知っている事柄です。「不幸の手紙」や「ネズミ講」・・・・誰でも一度は、生活の回りで経験しました。でも、ウサン臭い、と退けています。
★ ユビキタス時代の幕開けに「ケイタイSNS」などと、”新文明開化”の道筋を整え、時代の先端を行くモバイル機器を持たされて、「六次の隔たり」理論を聴かされても、私は、やはり、「それって? ”不幸の手紙”や”ネズミ講”と、何処がちがうの?」と聞き質したいのです。金儲けの絡む「六次の隔たり」は、必ず、7次で破綻します。ビジネスには向かない。ビジネスの立場から見るなら、これは、警告の理論です。
★ でも、若い人は、元気ですね。怖いモノ知らずで突っ走ります。
「ブログやSNS・・ケイタイも、やってみないとわからない。失敗するから・・・と、2の足踏むと、最初から敗者。時代の変化を読み取り、新しい市場を開拓した者が勝ち。大変動の時代は、パイオニア精神が必要です。今の可能性は、モバイル。挑戦しないテはありません」
★ 確かに若者たちの意見、一理、あります。自分の生活史のなかにある、おぞましい、「不幸の手紙」や「ネズミ講」の理屈と、それで人を巻き込む”人脈”作りの手口。あまりにも類似性が多く、ついつい、口出ししてしまいます。確かに危機管理ばかり言っておっては発展はありません。
★ まあしかし、何時の世にあっても、人付き合いは、対面の礼から。お互い顔を合わせて名乗り合い、十分、自らを知ってもらった上での交際の始まり。この「礼」の一点を欠かすことなく、新しいお出会いの感動を満喫させて頂きたい。残り少ない老後人生を豊かに実らせたいと思っています。
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【6206】 アメリカが未成年者のSNS利用規制へ
by zenmz
| 2006-08-20 14:04
| ネット考現学