2008年 12月 27日
【8277】 英語で講演するなら授賞式には出ません |
★ 今、一番、立派な日本人を挙げるとすれば、だれですか? そう問われれば、私は、ちゅうちょなく、ノーベル物理学賞を受けられた益川敏英博士、と申し上げます。なぜか? 世界の賞賛を浴びならが、申されました。「英語で講演するなら授賞式には出ません」 そして事実、「わたしは英語を話せません」と、胸を張って日本語で講演なさいました。
★ 今、日本の学校教育は、いわゆる”国際化教育”という亡霊に取り憑かれて、奇妙な風潮にながされています。小学生に英語必修の方針が示され、唖然とさせられたのはつい昨年のこと。今度は、高校では、「授業は英語で行うのが基本」との強化策を打ち出しました。全く無茶な話。出来るハズがありません。
★ それは、過去半世紀に及ぶ英語授業の実績が証明しています。私たち日本人は、もう半世紀以上もの間、中・高校で通算6年の英語を学びました。その後の高学歴志向で殆どの子どもたちは大学・短大に進学し、その上に4年間、英語を学びました。
★ 世の中の進歩は急速。就職すれば企業は国際化の渦中にありました。10年学んだ英語は、全く役に立たない。社会に出て、みんながそれを痛感しています。だから、英語の早期教育を・・・と、小学校での義務化や高校での「英語で行う授業」の発想が飛び出すのでしょうが、出来るはずはありません。
★ 小学校で、週2,3回、英語の授業をして、どれほどの語学力がつくのでしょう。また、「原則、英語で」やって、その授業を何人の生徒が理解できるのでしょう。早い話、それが可能か、どうか? 小・中・高校の全教師や親たちが実際に”実験授業”を受けて、自ら体験してみればいいと思います。
★ 他の方々のことは、分かりません。しかし、私自身は、旧師範学校で3年、大学で4年、英語を学びました。そして社会に出たのは新聞記者。NHKのラジオ放送で英会話を独学しました。半世紀、付き合った英語は未だ馴染みません。
怠けたことはありません。一所懸命、努力しましたが、半世紀を経た今も、ダメです。
★ 少なくとも、新しい言語習得に子どもたちよりも有利な立場にある、この人々を対象にモデル授業を1~3年、実際にやってみて、本当に成功すれば、採用も考えていいでしょう。ただ、私は、断言いたしますが、絶対に失敗します。出来るはずはありません。
★ 学校教育での英語の実用化を考える前に、もっと大切な問題が欠落しています。
私は、引退するまで大学・短大教員を25年間いたしました。高等教育機関の乱造と少子化の急激な進展で、大学・短大で何が起こっているか。本が読めない、文章が書けない。計算出来ない・・・大学生が急増しているのです。
★ 殆どの大学で今、取り組まざるを得ない新入生対策は、予定している講義の受講の前に補習コースを設けて本の読みから、文章の書き方・・要するに日本語をキチンと読んで、論述文章が書けるよう訓練せざるを得ないのが実情です。そのためにどれほど時間と経費を費やしていることか。お分かりでしょうか?
★ それだけではありません。一体、小・中・高・大、あらゆる段階の学校教育を英語漬けにしてどんな人間造りを目指すのでしょう。母国語教育がキチンと出来ているならまだしも、大学生の国語力はテレビの娯楽番組レベルです。この基礎言語力の上に英語を刷り込んでもダメですね。子どもたちに大きな負担をかけ、そして絶対、失敗します。
★ 直ぐ、アメリカではバイリンガル教育、などと言う主張もあるのですが、それは他民族国家が抱える苦悩の教育です。移民の子は英語が十分でないためにその能力があっても数学・物理・化学・社会などの授業についていけない。だから、その子の出身母国語で国語以外の授業を行う。そのような”補償”教育が米国初等・中等教育法でいう「バイリンガル教育」です。目的が違います。
★ 何かにつけて、英語、英語と言う風潮が、この国にあることは、誠に残念ですね。何か、英語と言えば、無条件で受け入れてしまう。イマドキ不可欠の教養、とでも言わんばかりの雰囲気になっています。取り払いましょう。人創りや教養に全く関係ないです。
★ 考えねばならないことは、私たちは、学校教育によって、どのような子どもを育てようとしているのか、です。英語漬け教育が目指す人間像が見えません。展望出来るのは、国際競争力の戦士になるビジネスマン。そんなのは大学を出てからでも養成できます。
★ 少なくとも学校教育、とりわけ義務教育段階では基礎的な母国語の言語能力を徹底的に身につけさせる。そのことが、もっと、もっと大切です。
★ それが出来た上で、自ら、必要に応じて、外国語を学ぶ能力を養っていく。それは、今まで通り中学から始まり高校-大学へと広がる。その形でいいのではないでしょうか。
日本はアメリカの植民地ではありません。
★ 母国語をないがしろにして、”国際化”の亡霊に取り憑かれ、ビジネス実用英語などの履修を子どもに強制するなど愚の骨頂。カタコト英語では、子どもたちは、日本人には育ちません。ヘタをすれば、根無し草の”文化的”植民地人間になってしまいます。
★ 押し被さる英語亡霊に苦しむ子どもたちを前に、私は言ってやりたいです。
「誇り高い日本人・益川敏英博士を見よ! 英語はいいから美しい日本語を学びなさい」 私は、それが正しい学校教育だと信じます。皆さんは、お子様を前に、どうお考えでございましょうか?
==== いただいたコメント ====
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** ご挨拶 ** ブログ【彷徨人生・・・喜寿から傘寿へ】公開に当たって
私のネット生活に寄せる想いです。ご理解賜りたくご一読をお願い申し上げます。
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★ 今、日本の学校教育は、いわゆる”国際化教育”という亡霊に取り憑かれて、奇妙な風潮にながされています。小学生に英語必修の方針が示され、唖然とさせられたのはつい昨年のこと。今度は、高校では、「授業は英語で行うのが基本」との強化策を打ち出しました。全く無茶な話。出来るハズがありません。
★ それは、過去半世紀に及ぶ英語授業の実績が証明しています。私たち日本人は、もう半世紀以上もの間、中・高校で通算6年の英語を学びました。その後の高学歴志向で殆どの子どもたちは大学・短大に進学し、その上に4年間、英語を学びました。
★ 世の中の進歩は急速。就職すれば企業は国際化の渦中にありました。10年学んだ英語は、全く役に立たない。社会に出て、みんながそれを痛感しています。だから、英語の早期教育を・・・と、小学校での義務化や高校での「英語で行う授業」の発想が飛び出すのでしょうが、出来るはずはありません。
★ 小学校で、週2,3回、英語の授業をして、どれほどの語学力がつくのでしょう。また、「原則、英語で」やって、その授業を何人の生徒が理解できるのでしょう。早い話、それが可能か、どうか? 小・中・高校の全教師や親たちが実際に”実験授業”を受けて、自ら体験してみればいいと思います。
★ 他の方々のことは、分かりません。しかし、私自身は、旧師範学校で3年、大学で4年、英語を学びました。そして社会に出たのは新聞記者。NHKのラジオ放送で英会話を独学しました。半世紀、付き合った英語は未だ馴染みません。
怠けたことはありません。一所懸命、努力しましたが、半世紀を経た今も、ダメです。
★ 少なくとも、新しい言語習得に子どもたちよりも有利な立場にある、この人々を対象にモデル授業を1~3年、実際にやってみて、本当に成功すれば、採用も考えていいでしょう。ただ、私は、断言いたしますが、絶対に失敗します。出来るはずはありません。
★ 学校教育での英語の実用化を考える前に、もっと大切な問題が欠落しています。
私は、引退するまで大学・短大教員を25年間いたしました。高等教育機関の乱造と少子化の急激な進展で、大学・短大で何が起こっているか。本が読めない、文章が書けない。計算出来ない・・・大学生が急増しているのです。
★ 殆どの大学で今、取り組まざるを得ない新入生対策は、予定している講義の受講の前に補習コースを設けて本の読みから、文章の書き方・・要するに日本語をキチンと読んで、論述文章が書けるよう訓練せざるを得ないのが実情です。そのためにどれほど時間と経費を費やしていることか。お分かりでしょうか?
★ それだけではありません。一体、小・中・高・大、あらゆる段階の学校教育を英語漬けにしてどんな人間造りを目指すのでしょう。母国語教育がキチンと出来ているならまだしも、大学生の国語力はテレビの娯楽番組レベルです。この基礎言語力の上に英語を刷り込んでもダメですね。子どもたちに大きな負担をかけ、そして絶対、失敗します。
★ 直ぐ、アメリカではバイリンガル教育、などと言う主張もあるのですが、それは他民族国家が抱える苦悩の教育です。移民の子は英語が十分でないためにその能力があっても数学・物理・化学・社会などの授業についていけない。だから、その子の出身母国語で国語以外の授業を行う。そのような”補償”教育が米国初等・中等教育法でいう「バイリンガル教育」です。目的が違います。
★ 何かにつけて、英語、英語と言う風潮が、この国にあることは、誠に残念ですね。何か、英語と言えば、無条件で受け入れてしまう。イマドキ不可欠の教養、とでも言わんばかりの雰囲気になっています。取り払いましょう。人創りや教養に全く関係ないです。
★ 考えねばならないことは、私たちは、学校教育によって、どのような子どもを育てようとしているのか、です。英語漬け教育が目指す人間像が見えません。展望出来るのは、国際競争力の戦士になるビジネスマン。そんなのは大学を出てからでも養成できます。
★ 少なくとも学校教育、とりわけ義務教育段階では基礎的な母国語の言語能力を徹底的に身につけさせる。そのことが、もっと、もっと大切です。
★ それが出来た上で、自ら、必要に応じて、外国語を学ぶ能力を養っていく。それは、今まで通り中学から始まり高校-大学へと広がる。その形でいいのではないでしょうか。
日本はアメリカの植民地ではありません。
★ 母国語をないがしろにして、”国際化”の亡霊に取り憑かれ、ビジネス実用英語などの履修を子どもに強制するなど愚の骨頂。カタコト英語では、子どもたちは、日本人には育ちません。ヘタをすれば、根無し草の”文化的”植民地人間になってしまいます。
★ 押し被さる英語亡霊に苦しむ子どもたちを前に、私は言ってやりたいです。
「誇り高い日本人・益川敏英博士を見よ! 英語はいいから美しい日本語を学びなさい」 私は、それが正しい学校教育だと信じます。皆さんは、お子様を前に、どうお考えでございましょうか?
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by zenmz
| 2008-12-27 00:03
| 現代社会論