2010年 08月 28日
【10109】 文章を書くために (3)・・・一気読みパラグラフを作る |
★ さて、新聞の”はかまコラム”から何を学び取るのか? 先ず、大切な確認。
《文章は、人に見せるために書く。 読んでもらう以上、それなりの工夫が必要。その工夫を学ぶ》 今日は、それを考えます。提案の結論を先に言っておきます。 読みやすい文章の基本は、《一気読みパラグラフを作る》こと。それが、基礎基本です。
新聞社説の利用は明日、取りあげることにします。
★ 「人に見せるために書く」・・・分かり切ったこと。なのになぜ、再確認?
SNSを見ていると、自己陶酔の修辞文字列が並ぶだけで、一体、何を伝えたいのか? メッセージの内容がつかめない。それに、ただ書き殴りの荒っぽい文章・・・このような例が随分、目につきます。
★ もう一つ、途中で投げ出すのが、工夫のない長文。行替え、段落なしで、文字列でビッシリ埋まっている文章。これも読者には不親切ですね。折角のご努力にお気の毒ですが、多分、最後まで読んでくれる方はないだろう、と思います。
★ もう60年近く前のはなしですが、未だ学生だった頃、英文随筆の書き方をこう教わりました。
★ 日本語文章の「段落」と似ていますが、ちょっと違います。同じトピックについて二つ以上のパラグラフが混在することは許されません。欧米語では基本的な文章道ですが日本語にはあまり、その意識はありません。
★ 初めてそれを教えてくださったのはアメリカ人講師のバートン・ワトソン先生でした。日本語、中国語の達人で、後に米・コロンビア大学教授になり、老子、荘子研究では世界のトップに立たれて碩学です。当時は京都大学大学院学生で吉川幸次郎先生の弟子でした。 【我が師、バートン・ワトソン先生】
★ 私が文章には工夫が必要と開眼したのは、このワトソン先生の《パラグラフ・レンガを積む文章論》がキッカケです。しかし、日本語は欧米語のように単語分かち書きではありませんからレンガのように形を整えるのは困難です。
★ 日本語の文章は流れるような文体を尊んできました。たしかに”豆腐のまろやかさ”の味わいはありますが、唯一、欠点は、崩れやすい。ご指摘の通りですね。”日本語文は論理性に欠ける”との批判も随分、ありますが、文体論から言えば、日本文には、本来、パラグラフ概念がないのです。
★ 読みやすくするために長文は、どこかで、切らねばなりません。文章の流れるようなまろやかさを生かしながら、積み重ねても崩れないようガッチリ固める。段落の設け方にも一工夫、必要です。そこで、新聞コラムを見て下さい。どの全国紙、地方紙も、共通して用いているのが、◎▼◆★ の符合文字。
★ 少し、注意して、その含意を類推しますと・・・段落ごとに、「さて話変わって」 「なお言えば」 「別な角度からみれば」と言った接続句の役割を果たしています。と、同時に”まろやか豆腐”文体をガッチリ固めるパラグラフになっています。
★ 読みやすく、しかも崩れない文体。実を言いますと、【◎▼◆★ の符合文字】の導入は、日本最初の新聞の創刊号に既に、用いられているのです。これは、日本語文体の歴史から言えば、画期的な出来事でした(当初は、少し小さめの●だけを使用)
★ もう一つ、誰もが気付くこと。どの一つのコラムを取りあげても、《◎~~~》のひとまとめ文章、段落ごとの文字列は、120字~150字が標準ですね。それを5,6個まとめて一つの文章になっています。
★ 全国紙、地方紙のすべてのコラムが、《一つのパラグラフを120字~150字》でまとめているのは、決して偶然ではありません。長年の経験がそれを生み出したのです。つまり、この単位は、”一気読み”に最適であり、かつ一つの事柄を伝えるに十分な文字量であるのです。
★ ちょっと脱線しますが、新聞記事で一番、読みやすい(つまり一気読み出来る)のは、一つの記事が600字~700字にまとめられているモノです。新聞の紙面美学から言って、見出しが付けやすく、写真をはめ込みやすい。つまり取り扱いに一番、重宝される長さです。
★ それも、読者が「読みやすい」と歓迎してくれる声を集積した結果です。
ケイタイ時代の到来で、最初の頃、ケイタイ・メールは250字以内の制約がありましたね。これは、非常に合理的な制約です。250字あれば、どのようなメッセージでも書けます。
★ とにかく、「読んでもらうため」の文章修行には、
《この”一気読み”パラグラフを積み重ねていくと、読みやすい文章になる》
パラグラフをどう作るか? その工夫次第で、文章は随分、多角的、立体的、複眼的に豊かになります。
★ パラグラフ作りを念頭に、第一回で紹介したレイモン・クノーの文体練習を重ねれば、万華鏡の世界をイメージさせる文章を作ることも可能でしょうね。この先は、あなたの工夫と、その実践次第です。
★ 新聞各社が、長い実践の中から生み出したコラム文体の基本は、パラグラフの開発。それを、キチンと学び取って欲しいと思います。それにつけても「◎▼◆★ の符合文字」の活用・・・誠に絶妙の味わいがありますね。日本文の弱点、「豆腐の角」をしっかり支えているではありませんか。
【注】
余談ですが、「◎▼◆★ の符合文字」に関連する記事を書いたことがあります。
日本初の新聞創刊当時の”新聞記事”事始めに関連して書いた一文
「”絵文字”発想の元祖は新聞」です。
ご関心がおありでしたらご参照ください。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
** ご挨拶 ** ブログ【傘寿を生きるロマン日記】公開に当たって
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
《文章は、人に見せるために書く。 読んでもらう以上、それなりの工夫が必要。その工夫を学ぶ》 今日は、それを考えます。提案の結論を先に言っておきます。 読みやすい文章の基本は、《一気読みパラグラフを作る》こと。それが、基礎基本です。
新聞社説の利用は明日、取りあげることにします。
★ 「人に見せるために書く」・・・分かり切ったこと。なのになぜ、再確認?
SNSを見ていると、自己陶酔の修辞文字列が並ぶだけで、一体、何を伝えたいのか? メッセージの内容がつかめない。それに、ただ書き殴りの荒っぽい文章・・・このような例が随分、目につきます。
★ もう一つ、途中で投げ出すのが、工夫のない長文。行替え、段落なしで、文字列でビッシリ埋まっている文章。これも読者には不親切ですね。折角のご努力にお気の毒ですが、多分、最後まで読んでくれる方はないだろう、と思います。
★ もう60年近く前のはなしですが、未だ学生だった頃、英文随筆の書き方をこう教わりました。
「文章はレンガを積むのと同じ。練り上げたいいパラグラフを上手に組むと立派な文章になる。日本文にはパラグラフがないから崩れやすい。豆腐で積み木をしているようで、文章が脆い。先ず、”パラグラフ・レンガ”を、一つ一つ吟味して作る、それを積み上げて、構築物に仕上げていく。パラグラフが悪いとどうしようもない」★ パラグラフ? ちょっと聞き慣れない、という方も多いでしょう。ある一つのトピックについて述べた文の集まりを意味します。パラグラフが変わるとトピックも変わる。そのような文章の単位です。
★ 日本語文章の「段落」と似ていますが、ちょっと違います。同じトピックについて二つ以上のパラグラフが混在することは許されません。欧米語では基本的な文章道ですが日本語にはあまり、その意識はありません。
★ 初めてそれを教えてくださったのはアメリカ人講師のバートン・ワトソン先生でした。日本語、中国語の達人で、後に米・コロンビア大学教授になり、老子、荘子研究では世界のトップに立たれて碩学です。当時は京都大学大学院学生で吉川幸次郎先生の弟子でした。 【我が師、バートン・ワトソン先生】
★ 私が文章には工夫が必要と開眼したのは、このワトソン先生の《パラグラフ・レンガを積む文章論》がキッカケです。しかし、日本語は欧米語のように単語分かち書きではありませんからレンガのように形を整えるのは困難です。
★ 日本語の文章は流れるような文体を尊んできました。たしかに”豆腐のまろやかさ”の味わいはありますが、唯一、欠点は、崩れやすい。ご指摘の通りですね。”日本語文は論理性に欠ける”との批判も随分、ありますが、文体論から言えば、日本文には、本来、パラグラフ概念がないのです。
★ 読みやすくするために長文は、どこかで、切らねばなりません。文章の流れるようなまろやかさを生かしながら、積み重ねても崩れないようガッチリ固める。段落の設け方にも一工夫、必要です。そこで、新聞コラムを見て下さい。どの全国紙、地方紙も、共通して用いているのが、◎▼◆★ の符合文字。
★ 少し、注意して、その含意を類推しますと・・・段落ごとに、「さて話変わって」 「なお言えば」 「別な角度からみれば」と言った接続句の役割を果たしています。と、同時に”まろやか豆腐”文体をガッチリ固めるパラグラフになっています。
★ 読みやすく、しかも崩れない文体。実を言いますと、【◎▼◆★ の符合文字】の導入は、日本最初の新聞の創刊号に既に、用いられているのです。これは、日本語文体の歴史から言えば、画期的な出来事でした(当初は、少し小さめの●だけを使用)
★ もう一つ、誰もが気付くこと。どの一つのコラムを取りあげても、《◎~~~》のひとまとめ文章、段落ごとの文字列は、120字~150字が標準ですね。それを5,6個まとめて一つの文章になっています。
★ 全国紙、地方紙のすべてのコラムが、《一つのパラグラフを120字~150字》でまとめているのは、決して偶然ではありません。長年の経験がそれを生み出したのです。つまり、この単位は、”一気読み”に最適であり、かつ一つの事柄を伝えるに十分な文字量であるのです。
★ ちょっと脱線しますが、新聞記事で一番、読みやすい(つまり一気読み出来る)のは、一つの記事が600字~700字にまとめられているモノです。新聞の紙面美学から言って、見出しが付けやすく、写真をはめ込みやすい。つまり取り扱いに一番、重宝される長さです。
★ それも、読者が「読みやすい」と歓迎してくれる声を集積した結果です。
ケイタイ時代の到来で、最初の頃、ケイタイ・メールは250字以内の制約がありましたね。これは、非常に合理的な制約です。250字あれば、どのようなメッセージでも書けます。
★ とにかく、「読んでもらうため」の文章修行には、
《この”一気読み”パラグラフを積み重ねていくと、読みやすい文章になる》
パラグラフをどう作るか? その工夫次第で、文章は随分、多角的、立体的、複眼的に豊かになります。
★ パラグラフ作りを念頭に、第一回で紹介したレイモン・クノーの文体練習を重ねれば、万華鏡の世界をイメージさせる文章を作ることも可能でしょうね。この先は、あなたの工夫と、その実践次第です。
★ 新聞各社が、長い実践の中から生み出したコラム文体の基本は、パラグラフの開発。それを、キチンと学び取って欲しいと思います。それにつけても「◎▼◆★ の符合文字」の活用・・・誠に絶妙の味わいがありますね。日本文の弱点、「豆腐の角」をしっかり支えているではありませんか。
【注】
余談ですが、「◎▼◆★ の符合文字」に関連する記事を書いたことがあります。
日本初の新聞創刊当時の”新聞記事”事始めに関連して書いた一文
「”絵文字”発想の元祖は新聞」です。
ご関心がおありでしたらご参照ください。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
** ご挨拶 ** ブログ【傘寿を生きるロマン日記】公開に当たって
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
by zenmz
| 2010-08-28 22:04
| 言霊