2006年 05月 15日
【6127】 未来を開く教育(Ⅳ) |
★ 今、福岡で100㌫、インターネットを使って講義を行う全く新しいタイプの大学を作る計画が進んでいます。福岡市の「福岡アジアビジネス特区」に、ソフト・バンクや九州電力など地元企業がバック・アップして来年度開校を目指している「日本サイバー大学」 4年制の正規大学で、すべての講義をインターネットで行うそうです。
★ 設置学部は、「コンピューター&ビジネス」と「観光分野を学ぶ世界遺産」の二つ。定員は各千人。ソフトバンクが関連会社日本サイバー教育研究所を通じて運営する。初代学長にはエジプト学者でテレビで有名な吉村作治・元早稲田大学教授が決まっています。これは、非常に興味深い試みです。IT情報革命の幕開け、当然、期待される新しい高等教育機関が来年春には誕生しそうです。
★ 早くも、伝統的な学校教師からは「通学しないで、自宅でインターネットの前に座るだけで卒業出来る大学など???」と疑問の声が出始めています。しかし、私は、それは、全く見当違い、そこで行われる予定の【オンデマンド授業】は、これまで、経験的に繰り返されてきた定番教授法【対面一斉授業】に大きな風穴を開けて教育界に新風を吹き込むと思います。
★ 私は、教員最後の仕上げとして、2000年4月から2002年3月までの2年間に、大阪城南女子短期大学で、【インターネットを使ったオンデマンド授業】の試行実験授業を行いました。その結果は、驚くべきものがありました。今回は、三つの成功例をご紹介してみたい、と思います。
====== 私のオンデマンド指導 =====
★ 一斉対面授業内容の記録・保存・・・・・私は、同短大の人間福祉学科と専攻科福祉専攻で担当したすべての授業で、講義内容を全部、文字化し、インターネットでパソコン上に何時でも呼び出せるように公開しました。これによって学生たちは、過去の授業をそのまま再現し復習することが出来ます。
★ 指導の個別化・・・・・・次に学生たちは、何時でも、必要がある時、予告することなく、研究室訪問(研究室は学生に全面開放しました) 電話、ファックス、インターネット、ケイタイで、何時でも、何処でも、学習相談出来るよう環境整備を整えました。
「分からないことにぶち当たったら直ぐ、質問」 「学ぶ気持ちが湧き出たら直ぐ、アドバイス」 とにかく「指導を求める必要が出来たら、直ぐ、コンタクト」が出来るようメ、自宅書斎のパソコンを3台に増設し、ファックス受信アラームを取り付けました。
★ 【学習支援のページ】・・・毎週の授業シラバスは研究室報『志縁・知縁』に掲載し、学習のポイントを記しましたが、そこに掲げた参考文献は、公表されている最新のものを利用するよう、インターネット上に【学習支援のページ】を設けて、整理しました。これにより学生は、クリックするだけで、その授業に必要な参考資料にたどりつけます。
★ 指導の個別化の徹底・・・・「疑問には直ぐ回答」 学びにはそれが一番、大事です。これを徹底させるため、ケイタイの利用を呼びかけました。ちょうど、高校生の間でケイタイが大流行し始めた頃で、パソコンの前に座らせると、「お勉強ムード」で嫌がる学生も、「ケイタイで気軽に」と呼びかけると、実に雄弁になるのにビックリしました。
===《成功例 Ⅰ》 「補習授業への波及効果」 ====
★ 大学・短大の授業を見ていて、何時も不審に思って来たのは、期末試験のあり方です。学校、教師によって千差万別ですが、ともかく非常に多く、目立つのが、不合格点をつけた者への対応。通常、落とした者には欠席者救済を含めて後日、追・再試をしています。私が不審に思うのは、殆どの場合、補習講義もなく、しかも数日の内に、その試験を行い、しかも、殆どの者が合格することです。
★ もうかれこれ20年ほど前の話ですが、専任の大学教師になって間もなく、学生たちが「まあ、4500円払えば、くれるから心配ない」と言っているのを耳にしました。卒業前に3科目の試験を落としたが、追試料を払って試験を受ければ単位は呉れる・・・そんなことを気軽に話しているのです。学生たちはすべて見抜いていると思いました。
★ 私は、落とした学生には必ず補習をしてきました。大学・短大の授業は半年15コマ、1コマ90分が普通ですが、落とした学生には、必ず、正味22.5時間、つまり過去に行った授業相当分の復習を義務づけ、その授業シラバスに従ってのノート点検(大学ノート一冊分相当)を行い、その努力が認められる場合だけ、追試験を許可してきました。
★ インターネットを活用して始めた【オンデマンド個別指導】は、この追試者対象の補習授業に非常に大きな効果もたらしました。すべての講義記録はインターネットに残っています。これまでの経験では、通常試験で要求水準に達しなかった学生は、例外なくノートがとれていません。そこで、追試該当者には、試験前3日間、1日8時間の復習を義務づけました。
★ その方法は、所定の教室に登校させて「オンデマンド授業」を受けさせる。つまり、講義内容を最初から復習し、ノートに要点を整理させるのです。要点整理が出来なければ、全文、書き写す指導をします。1日8時間、私は、岡山の自宅からインターネット、ケイタイで、随時、復習の進捗度をチェックし、重点ポイントを指摘しながら学習を誘導します。
★ その上で、追・再試験を行いますが、これまた、例外なく、どの学生も必ず、80点以上の合格点をとります。該当者は、最初、多少、ふて腐れ顔で姿を現しますが、試験が終わって一息つくと、涙を流しながら「先生、勉強の仕方、やっと、分かった。もうちょっと、早く気づいていたら・・・学校がもっと楽しかったのに・・・。先生、ありがとう」
★ 学生たちは本当に可愛い者です。私は、絶対に、学生たちに追・再試験手続きはとらせません。学校に成績報告を出す前に、補習授業を行い、全員、クリアさせるのが私の義務と心得て来ました。水準に達しない学生を形式的な”見せしめ”テストでお茶濁ししている実態はかなりあります。
★ 教育不作為のトコロテン卒業は、既に社会一般の不信感をかき立てています。文部科学省の指導もあり、各大学短大では、最近、評価委員会などが設けれるようになっていますが、先ず、この悪弊の実態調査をなさるべきでありましょう。
==== 《成功例 Ⅱ》 点字、全員完全履修の奇蹟 ====
★ 私は、大学・短大の教員を30年近く、続けました。その中で、一番、困難を極めたのが「点字の授業」です。半期15コマの一斉対面演習で教えて来ましたが、「点字を読む」課題はクリヤ出来ても「点字が書ける」段階をクリヤ出来る段階に到達出来た学生はクラスの2割にも達しませんでした。
★ ところが、この学校で普通の対面一斉授業に、《オンデマンド個別指導》を取り入れて授業改善を試みたところ、全く驚嘆すべき成果が現れました。特に2001年度後期の専攻科福祉専攻での【点字の学習】では、僅か3ヶ月の集中授業で、60人全員が、完全に点字の読み書きをマスターし、最終的に課題とされた「冬休みの点字日記」を全員が完成したのです。
10日間、毎日、その日の日誌を点字で裏表2ページ以上を書く。それが課題です。全員が出来た! これは、30年に亘る私の教師生活で初めての快挙でした。
★ その秘密は、ケイタイによる【オンデマンド個別指導】にあります。この授業では、先ず、夏休み前に【6点点字の仕組み】を渡して独習することを要求し、それに基づいて、後期授業で、【点字の誕生】を講義、その後、演習として、点字の読み書きに挑戦するのですが、3ヶ月に亘るこの授業で、学生と私の間で交わされた質疑応答は、何と658件。
★ この意味は重大です。通常、教室で行われている対面一斉授業で質問は、無いのがふつう。あっても2,3件にとどまります。授業の中での質疑応答が658件というのは実は、とても考えられない驚異的な数字なのです。その内容も、心をさらけ出しています。
2001.10.28 11:02 受信
【◎垣◆理】
あまりにも長くて読むだけで疲れてしまった。ちょっと、休んでいいですか?
【銭本】
読むだけで疲れる?? これを語っている(書いている)方は、全然、疲れないのですが、何故でしょう。クラインやブライユ、バランタン・アウイの話を始めると、何か、私は情熱的になります。
2001.10.28 11:12 受信
【三▼千春】
漢字が読めず、前へなかなか進めません。
【銭本】
これはやはり平素の勉強法に問題があります。例えば、研究書を一冊でも読むとなると見慣れない漢字がいっぱい出てきます。それを確かめないで、【眺める】だけの本の読み方をしているのではないでしょうか? 大学・短大で学ぶ事柄はすべて研究です。辞書をひく手間を省いてはいけません。私のホームページには、パソコンで引ける辞書をいれてあります。勉強のコツは常に辞書をひく、それを習慣化することです。
★ そして、卒業前の期末テスト。何と、全員、優!
私は厳しい教師でした。教師生活30年、その最後の授業で、初めて記した感激の評価、【全員、優】 でした。30年間、絶対に無かったこと! 感無量でした。
===== 手作りの卒業研究CD-R化 =====
★ 大阪城南女子短期大学は、2年生の後期に学習の総まとめとして「卒業研究」を課しています。めいめい5人の教員が分担するゼミに登録して、自分が選んだテーマを追究してまとめるのですが、私が主宰する「銭本ゼミ」は、他の4ゼミの「卒業研究」を総編集してCD-Rで発行するテーマを掲げました。これまでの授業参加の関心度を点検し、4人を選んでパソコンの練習から始めました。
★ ただ、一人を除いて、他の3人はパソコンの経験ゼロ。これから4ヶ月で、他のゼミが仕上げる「卒業研究」をまとめてCD-Rに編集・発行が果たして可能か、どうか? 殆どの方々が疑問視しました。出来るか、どうか、とにかくやってみよう。銭本ゼミは、24時間、【オンデマンド個別指導】方式で、パソコン履修を開始しました。ゼミ指導は、放課後、毎日。一人一人のパソコンを調達して与え、インターネットとケイタイでサイバー授業です。
★ 多くの困難がありました。しかし、4人は見事にやり遂げました。自らの銭本ゼミの研究記録と他の4ゼミ登録者全員の「卒業研究」をホームページにまとめ、さらに卒業研究旅行「韓国大邱大學校訪問」記録(動画と静止画アルバム) も完成して、すばらしいCD-R『私の卒業研究』に完成しました。
★ 2002年3月、私は、共にこの学校にやって来た人間福祉学科第1期生とともに、この学校を卒業しました。
「皆さん、10年後に再び、会いましょう。私たちが作り上げた新しい教育《オンデマンド・サイバー授業》 10年の近未来からやってきた留学生たちと共に、このCD-Rを開いて、この2年間の教育評価をいたしましょう。
その時、皆さんの大半は32歳の福祉専門家。同時に子どもを持つ幸福な母親。私は、82歳の老人です。
この教育が総決算される再会の日を楽しみにしています。
皆さん、お元気で、そして大成を」
学生たちに最後の言葉を残して、私に30年の教育総決算を自由に創るチャンスを与えて呉れた、思い出深い、この城南学園を去りました。
【感謝】
7回に亘る長期連載になりました「私の教育論」、今回をもちまして終了させて頂きます。長い間、お付き合い下さいましてありがとうございました。
私といたしましては、長年の主張であります「教室に太陽の光を・・」(サンシャイン運動)の証しのつもりで、出来るだけ、具体的、詳細に・・・を心がけ、古証文を並べ立てました。
、しかし、sml8013さんから「長すぎる」と、率直なご指摘を頂戴し、ハタと気づいたことがございます。確かにSNSやブログには、不適切であったかも・・・と、反省しているところであります。
これより先、ブログの構文、文体、さらには一つの記事の分量、レイアウトを含めて、どのようにあるのが理想的か? 少し、考えながら新たな試みをしてみたいと思います。
今後とも、何とぞ、ご指導、ご鞭撻の程、お願い申し上げます。
バックナンバーは、以下のリストのリンクをご利用下さい。
【我が教育の出発点】(Ⅰ)
【我が教育の出発点】(Ⅱ)
【我が教育の出発点】(Ⅲ)
【未来を拓く教育】(Ⅰ)
【未来を拓く教育】(Ⅱ)
【未来を拓く教育】(Ⅲ)
【未来を拓く教育】(Ⅳ)
★ 設置学部は、「コンピューター&ビジネス」と「観光分野を学ぶ世界遺産」の二つ。定員は各千人。ソフトバンクが関連会社日本サイバー教育研究所を通じて運営する。初代学長にはエジプト学者でテレビで有名な吉村作治・元早稲田大学教授が決まっています。これは、非常に興味深い試みです。IT情報革命の幕開け、当然、期待される新しい高等教育機関が来年春には誕生しそうです。
★ 早くも、伝統的な学校教師からは「通学しないで、自宅でインターネットの前に座るだけで卒業出来る大学など???」と疑問の声が出始めています。しかし、私は、それは、全く見当違い、そこで行われる予定の【オンデマンド授業】は、これまで、経験的に繰り返されてきた定番教授法【対面一斉授業】に大きな風穴を開けて教育界に新風を吹き込むと思います。
★ 私は、教員最後の仕上げとして、2000年4月から2002年3月までの2年間に、大阪城南女子短期大学で、【インターネットを使ったオンデマンド授業】の試行実験授業を行いました。その結果は、驚くべきものがありました。今回は、三つの成功例をご紹介してみたい、と思います。
====== 私のオンデマンド指導 =====
★ 一斉対面授業内容の記録・保存・・・・・私は、同短大の人間福祉学科と専攻科福祉専攻で担当したすべての授業で、講義内容を全部、文字化し、インターネットでパソコン上に何時でも呼び出せるように公開しました。これによって学生たちは、過去の授業をそのまま再現し復習することが出来ます。
★ 指導の個別化・・・・・・次に学生たちは、何時でも、必要がある時、予告することなく、研究室訪問(研究室は学生に全面開放しました) 電話、ファックス、インターネット、ケイタイで、何時でも、何処でも、学習相談出来るよう環境整備を整えました。
「分からないことにぶち当たったら直ぐ、質問」 「学ぶ気持ちが湧き出たら直ぐ、アドバイス」 とにかく「指導を求める必要が出来たら、直ぐ、コンタクト」が出来るようメ、自宅書斎のパソコンを3台に増設し、ファックス受信アラームを取り付けました。
★ 【学習支援のページ】・・・毎週の授業シラバスは研究室報『志縁・知縁』に掲載し、学習のポイントを記しましたが、そこに掲げた参考文献は、公表されている最新のものを利用するよう、インターネット上に【学習支援のページ】を設けて、整理しました。これにより学生は、クリックするだけで、その授業に必要な参考資料にたどりつけます。
★ 指導の個別化の徹底・・・・「疑問には直ぐ回答」 学びにはそれが一番、大事です。これを徹底させるため、ケイタイの利用を呼びかけました。ちょうど、高校生の間でケイタイが大流行し始めた頃で、パソコンの前に座らせると、「お勉強ムード」で嫌がる学生も、「ケイタイで気軽に」と呼びかけると、実に雄弁になるのにビックリしました。
===《成功例 Ⅰ》 「補習授業への波及効果」 ====
★ 大学・短大の授業を見ていて、何時も不審に思って来たのは、期末試験のあり方です。学校、教師によって千差万別ですが、ともかく非常に多く、目立つのが、不合格点をつけた者への対応。通常、落とした者には欠席者救済を含めて後日、追・再試をしています。私が不審に思うのは、殆どの場合、補習講義もなく、しかも数日の内に、その試験を行い、しかも、殆どの者が合格することです。
★ もうかれこれ20年ほど前の話ですが、専任の大学教師になって間もなく、学生たちが「まあ、4500円払えば、くれるから心配ない」と言っているのを耳にしました。卒業前に3科目の試験を落としたが、追試料を払って試験を受ければ単位は呉れる・・・そんなことを気軽に話しているのです。学生たちはすべて見抜いていると思いました。
★ 私は、落とした学生には必ず補習をしてきました。大学・短大の授業は半年15コマ、1コマ90分が普通ですが、落とした学生には、必ず、正味22.5時間、つまり過去に行った授業相当分の復習を義務づけ、その授業シラバスに従ってのノート点検(大学ノート一冊分相当)を行い、その努力が認められる場合だけ、追試験を許可してきました。
★ インターネットを活用して始めた【オンデマンド個別指導】は、この追試者対象の補習授業に非常に大きな効果もたらしました。すべての講義記録はインターネットに残っています。これまでの経験では、通常試験で要求水準に達しなかった学生は、例外なくノートがとれていません。そこで、追試該当者には、試験前3日間、1日8時間の復習を義務づけました。
★ その方法は、所定の教室に登校させて「オンデマンド授業」を受けさせる。つまり、講義内容を最初から復習し、ノートに要点を整理させるのです。要点整理が出来なければ、全文、書き写す指導をします。1日8時間、私は、岡山の自宅からインターネット、ケイタイで、随時、復習の進捗度をチェックし、重点ポイントを指摘しながら学習を誘導します。
★ その上で、追・再試験を行いますが、これまた、例外なく、どの学生も必ず、80点以上の合格点をとります。該当者は、最初、多少、ふて腐れ顔で姿を現しますが、試験が終わって一息つくと、涙を流しながら「先生、勉強の仕方、やっと、分かった。もうちょっと、早く気づいていたら・・・学校がもっと楽しかったのに・・・。先生、ありがとう」
★ 学生たちは本当に可愛い者です。私は、絶対に、学生たちに追・再試験手続きはとらせません。学校に成績報告を出す前に、補習授業を行い、全員、クリアさせるのが私の義務と心得て来ました。水準に達しない学生を形式的な”見せしめ”テストでお茶濁ししている実態はかなりあります。
★ 教育不作為のトコロテン卒業は、既に社会一般の不信感をかき立てています。文部科学省の指導もあり、各大学短大では、最近、評価委員会などが設けれるようになっていますが、先ず、この悪弊の実態調査をなさるべきでありましょう。
==== 《成功例 Ⅱ》 点字、全員完全履修の奇蹟 ====
★ 私は、大学・短大の教員を30年近く、続けました。その中で、一番、困難を極めたのが「点字の授業」です。半期15コマの一斉対面演習で教えて来ましたが、「点字を読む」課題はクリヤ出来ても「点字が書ける」段階をクリヤ出来る段階に到達出来た学生はクラスの2割にも達しませんでした。
★ ところが、この学校で普通の対面一斉授業に、《オンデマンド個別指導》を取り入れて授業改善を試みたところ、全く驚嘆すべき成果が現れました。特に2001年度後期の専攻科福祉専攻での【点字の学習】では、僅か3ヶ月の集中授業で、60人全員が、完全に点字の読み書きをマスターし、最終的に課題とされた「冬休みの点字日記」を全員が完成したのです。
10日間、毎日、その日の日誌を点字で裏表2ページ以上を書く。それが課題です。全員が出来た! これは、30年に亘る私の教師生活で初めての快挙でした。
★ その秘密は、ケイタイによる【オンデマンド個別指導】にあります。この授業では、先ず、夏休み前に【6点点字の仕組み】を渡して独習することを要求し、それに基づいて、後期授業で、【点字の誕生】を講義、その後、演習として、点字の読み書きに挑戦するのですが、3ヶ月に亘るこの授業で、学生と私の間で交わされた質疑応答は、何と658件。
★ この意味は重大です。通常、教室で行われている対面一斉授業で質問は、無いのがふつう。あっても2,3件にとどまります。授業の中での質疑応答が658件というのは実は、とても考えられない驚異的な数字なのです。その内容も、心をさらけ出しています。
2001.10.28 11:02 受信
【◎垣◆理】
あまりにも長くて読むだけで疲れてしまった。ちょっと、休んでいいですか?
【銭本】
読むだけで疲れる?? これを語っている(書いている)方は、全然、疲れないのですが、何故でしょう。クラインやブライユ、バランタン・アウイの話を始めると、何か、私は情熱的になります。
2001.10.28 11:12 受信
【三▼千春】
漢字が読めず、前へなかなか進めません。
【銭本】
これはやはり平素の勉強法に問題があります。例えば、研究書を一冊でも読むとなると見慣れない漢字がいっぱい出てきます。それを確かめないで、【眺める】だけの本の読み方をしているのではないでしょうか? 大学・短大で学ぶ事柄はすべて研究です。辞書をひく手間を省いてはいけません。私のホームページには、パソコンで引ける辞書をいれてあります。勉強のコツは常に辞書をひく、それを習慣化することです。
★ そして、卒業前の期末テスト。何と、全員、優!
私は厳しい教師でした。教師生活30年、その最後の授業で、初めて記した感激の評価、【全員、優】 でした。30年間、絶対に無かったこと! 感無量でした。
===== 手作りの卒業研究CD-R化 =====
★ 大阪城南女子短期大学は、2年生の後期に学習の総まとめとして「卒業研究」を課しています。めいめい5人の教員が分担するゼミに登録して、自分が選んだテーマを追究してまとめるのですが、私が主宰する「銭本ゼミ」は、他の4ゼミの「卒業研究」を総編集してCD-Rで発行するテーマを掲げました。これまでの授業参加の関心度を点検し、4人を選んでパソコンの練習から始めました。
★ ただ、一人を除いて、他の3人はパソコンの経験ゼロ。これから4ヶ月で、他のゼミが仕上げる「卒業研究」をまとめてCD-Rに編集・発行が果たして可能か、どうか? 殆どの方々が疑問視しました。出来るか、どうか、とにかくやってみよう。銭本ゼミは、24時間、【オンデマンド個別指導】方式で、パソコン履修を開始しました。ゼミ指導は、放課後、毎日。一人一人のパソコンを調達して与え、インターネットとケイタイでサイバー授業です。
★ 多くの困難がありました。しかし、4人は見事にやり遂げました。自らの銭本ゼミの研究記録と他の4ゼミ登録者全員の「卒業研究」をホームページにまとめ、さらに卒業研究旅行「韓国大邱大學校訪問」記録(動画と静止画アルバム) も完成して、すばらしいCD-R『私の卒業研究』に完成しました。
★ 2002年3月、私は、共にこの学校にやって来た人間福祉学科第1期生とともに、この学校を卒業しました。
「皆さん、10年後に再び、会いましょう。私たちが作り上げた新しい教育《オンデマンド・サイバー授業》 10年の近未来からやってきた留学生たちと共に、このCD-Rを開いて、この2年間の教育評価をいたしましょう。
その時、皆さんの大半は32歳の福祉専門家。同時に子どもを持つ幸福な母親。私は、82歳の老人です。
この教育が総決算される再会の日を楽しみにしています。
皆さん、お元気で、そして大成を」
学生たちに最後の言葉を残して、私に30年の教育総決算を自由に創るチャンスを与えて呉れた、思い出深い、この城南学園を去りました。
【感謝】
7回に亘る長期連載になりました「私の教育論」、今回をもちまして終了させて頂きます。長い間、お付き合い下さいましてありがとうございました。
私といたしましては、長年の主張であります「教室に太陽の光を・・」(サンシャイン運動)の証しのつもりで、出来るだけ、具体的、詳細に・・・を心がけ、古証文を並べ立てました。
、しかし、sml8013さんから「長すぎる」と、率直なご指摘を頂戴し、ハタと気づいたことがございます。確かにSNSやブログには、不適切であったかも・・・と、反省しているところであります。
これより先、ブログの構文、文体、さらには一つの記事の分量、レイアウトを含めて、どのようにあるのが理想的か? 少し、考えながら新たな試みをしてみたいと思います。
今後とも、何とぞ、ご指導、ご鞭撻の程、お願い申し上げます。
バックナンバーは、以下のリストのリンクをご利用下さい。
【我が教育の出発点】(Ⅰ)
【我が教育の出発点】(Ⅱ)
【我が教育の出発点】(Ⅲ)
【未来を拓く教育】(Ⅰ)
【未来を拓く教育】(Ⅱ)
【未来を拓く教育】(Ⅲ)
【未来を拓く教育】(Ⅳ)
by zenmz
| 2006-05-15 23:13
| にわか教師の教育実践