2006年 06月 24日
【6170】 豊かな自然の中の貧困 |
★ もう少し、梅雨で思うことを記します。
梅雨は、【日本独特】 つまり、日本が地球上に置かれた地理的事情による、のだそうです。春から夏に移り変わる季節になると、大陸の冷たい高気圧を太平洋側の暖かい高気圧が押し上げようとします。性質が異なる二つの空気がぶつかると、大気の状態が不安定になり、梅雨前線が発生し、長期に亘って活動する。これが梅雨ですが、やがて、夏になり、太平洋高気圧の勢力が急速に拡大すると、前線は日本海側に押し上げられて梅雨が終わって、カンカン照りの夏になる。日本列島の特殊事情による気候現象なのですね。
★ その日本列島。世界的に有名な島国です。「北海道、本州、四国、九州の四つの島が・・・」ではなく、6,852島を数える群島が創る国。それを全部、あわせても面積は約37.8万平方キロしかない、世界60位のスモール・サイズ国です。70パーセントは山岳。特筆すべきは、6.852島すべてが、四面、海に囲まれ、外界から遮断されていることでしょう。
★ そして、6,852島をめぐる複雑な潮流もまた、変化に富んでいます。暖流と寒流が流れ込み、渦巻く接点の潮境で、豊富なプランクトンが発生します。島々は、沖に広い大陸棚や、複雑な海岸を持っていて、魚介類を育てます。長く、日本列島の太平洋寄り北部の海域は、世界3大漁場の一つでした。それ故に海洋日本の名は世界に知られていました。手を伸ばせば、どこでも新鮮な魚介類が獲られる。
★ 海で外界から遮断された地政的意味は実に大きいと言わねばなりません。世界の多くの国々は、陸地に人工線を引いて国々を分けています。国境をめぐる紛争は日常茶飯事。それが庶民の日常生活レベルでの国際緊張を生み出します。不法入国、不法就労、そして犯罪・・・大国アメリカがメキシコとの長い国境線で手を焼いている悩みなど、日本人には、まずピンときません。何時の時代も、海は、国土防衛、最大の防波堤でした。
★ しかも・・・この平和な群島国には、月日をほぼ正確に4等分した四季が訪れ、自然の恵みをもたらします。春夏秋冬。それぞれに豊かで、四季の変化に富んだ食物を人々に供給し、深い文化を生み出しました。何よりも命の源である食文化。山を潤す豊かな清流は、山野の幸を育て、ミネラルを海に供給して、海の生き物を育みました。そして1年を通して食膳を賑わす旬の味。この四季がもたらすこの幸いは、恐らく世界でも他にない【日本独特】でしょう。
★ 遠い昔、私たちの父祖は、この土地を「豊葦原瑞穂国」と愛でました。その古い伝承をまとめて『古事記』は、驚くべきイマジネーションで現にある日本列島の姿を描き出しています。その土地に大陸から伝わった種もみ直播の陸稲を水田を開いて水稲にし、生産性を飛躍的に高める独創性豊かな米の文化を生みました。
★ 古き、良き時代の日本。その気高いまでに高い日本の精神性を歌い上げ、世界に「ニッポンあり」と注目させた明治の巨人、岡倉天心を思い起こします。今、75歳を終わり76歳になろうとする私が、生まれるよりも前に、英語で「茶の本」を著し、鎖国の江戸時代から国内で熟成させた濃厚な日本文化について、高らかに歌い上げました。
★ たとえば、はじめに次のように述べています。
「西洋人は、日本が平和のおだやかな技芸に耽っていたとき、日本を野蛮国とみなしていたものである。だが、日本が満州の戦場で大殺戮を犯しはじめて以来、文明国とよんでいる」
「いつになったら西洋は東洋を理解するのか。西洋の特徴はいかに理性的に”自慢”するかであり、日本の特徴は”内省”によるものである」
★ 大正から昭和に時代が移り変わった頃の話です。
この指摘は、西洋人に驚愕の眼差しで迎えられましたが、当の日本人は、この誇りを捨て、【理性的に”自慢”する】西洋人を真似ることに専念しました。欧米こそが世界標準・・・特に戦後は完全なまでにアメリカ化した我々は、謙譲に身を包む内省の美徳を捨て去りました。そして、今や、自己主張万能の風潮に身を置いています。
★ 【理性的に”自慢”する】文明の論理に乗りかかった政府は、世にも不思議な悪政で「豊葦原瑞穂国」の農民を殺しました。減反です。その昔、「米作り日本一」を自負する篤農家は、日本のどの村にもいました。その人々に、政府は、「お小遣いあげるから、コメ作りヤメテ」と地方自治体を総動員して農民いじめを続けました。
★ これが我が命、と、先祖代々、農業を誇りにして来た人々をわずかな小遣い銭で徹底的にスポイルしたのです。【理性的に”自慢”する】文明は、農地をつぶして工業を広げました。そして・・・・村に百姓がいなくなった。いまや、国内で消費される食糧のほとんどが・・・驚くなかれ、大豆も、ネギも輸入品。世界的にも食料自給率は最下位をうろつく状態です。
★ それでいて、飽食に身をゆだね。外食産業の過当競争で山なす廃棄食品。篤農の精神を忘れ、肥満体の生活習慣病が蔓延しはじめた民族は一体、どうなるのか? 梅雨の恵みに浸りながら、天の摂理が、この先、どう働くのか? それを思わずにはいられません。
★ 篤農の人に米作りをさせない、それを浸透させるため僅かなカネをちらつかせ、更には農協、町村を総動員して陰湿ないじめを40年間、し続けた政府。コメ政策をめぐる政府の【理性的に”自慢”する】詭弁はやっと終わりそうです。だが・・・もう遅い。一旦、放棄された田圃は容易に元に戻りません。それ以上に、抜かれた魂は戻らぬでしょう。政府の犯罪とも言うべき愚策の尻ぬぐいに、再び農民が動員されます。それでいいのか? 誰も責任をとらないオカミ仕事、誠にここに極まれり、の感一入です。
【注】
本文中、岡倉天心への言及は、京都の茶人「椿わびすけ」さんから岡倉天心の著作を読むようお薦めがあり、それがキッカケで気づきました。ここに記録し、感謝申し上げます。
…・・・・・・・ 吉備高原便り(14) ・・・・・・・・・・
【新企画】 我が家、我が町 の 日々の寸描を掲載します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
西日本一の「ニューサイエンス館」
★ 棚田と松茸山しかなかった岡山県のど真ん中、そこに出現したニュータウンが吉備高原都市です。バブル最盛期に21世紀未来都市のモデルに・・・と、国と県が意気込んで取り組んだ事業でした。その象徴的施設が「吉備高原ニューサイエンス館 」(Kibikohgen New Science Center) 「先端技術の現在」が一目で分かる科学館です。
★ 展示の分野は、エレクトロニクス・新素材・新エネルギー・バイオテクノロジー・・・等。その原理の解説と、現到達段階の新技術、更には追究されている未来技術へと多角的です。子どもも、大人も、見て、触れて、楽しみながら、新しい時代の技術を体験できるのがご自慢。
★ 独立行政法人「科学技術振興機構」のホームページ「日本の科学館めぐり」で調べてみますと、全国には、「科学館」は634館もあるそうです。が、「先端科学」をテーマにしているのは47館だけ。特に中国地方には「KDDI パラボラ館」(KDDI Parabola Pavilion ・山口市)とここだけの二つしかありません。 希少価値があるユニークな科学館、実際、訪れると、納得されると思います。
★ ここは、展示室中央にある”習字ロボット”、ボタンを押すと、「イラッシャイマセ」と挨拶して、握りしめた墨筆で、「科学する心」と書き、記念に渡してくれます。そこから光通信システム、生命工学のバイオテクノロジー、太陽電池の新エネルギー、高分子新素材の構造と機能・・ そして最後はナノテクノロジー(超微細技術)
一巡すると、きっと「目が覚める」思いに浸ります。
★ 1日2回(午前11時、午後2時)の3Dシアターも、お見逃しなく。2台のプロジェクタから、110インチのスクリーンに投影した映像を、特殊な専用メガネで臨場感あふれる立体映像を見ることができます。「群青の舞踏会」と「wings(やませみ)」 きっと驚かれます。
★ 吉備高原都市には、様々な施設がありますが、原則、無料です。ここももちろん、無料。ただ、隣接しているテニス・コートだけが有料。テニスを兼ねて、一日、ゆっくり、一家でスポーツと現代科学のお勉強という過ごし方をなさっている常連もおられるようです。是非、一度、お訪ね下さい。月曜日と年末年始(12/28~1/3)が休館で、それ以外は、毎日午前9時30分~午後4時まで開いています。
梅雨は、【日本独特】 つまり、日本が地球上に置かれた地理的事情による、のだそうです。春から夏に移り変わる季節になると、大陸の冷たい高気圧を太平洋側の暖かい高気圧が押し上げようとします。性質が異なる二つの空気がぶつかると、大気の状態が不安定になり、梅雨前線が発生し、長期に亘って活動する。これが梅雨ですが、やがて、夏になり、太平洋高気圧の勢力が急速に拡大すると、前線は日本海側に押し上げられて梅雨が終わって、カンカン照りの夏になる。日本列島の特殊事情による気候現象なのですね。
★ その日本列島。世界的に有名な島国です。「北海道、本州、四国、九州の四つの島が・・・」ではなく、6,852島を数える群島が創る国。それを全部、あわせても面積は約37.8万平方キロしかない、世界60位のスモール・サイズ国です。70パーセントは山岳。特筆すべきは、6.852島すべてが、四面、海に囲まれ、外界から遮断されていることでしょう。
★ そして、6,852島をめぐる複雑な潮流もまた、変化に富んでいます。暖流と寒流が流れ込み、渦巻く接点の潮境で、豊富なプランクトンが発生します。島々は、沖に広い大陸棚や、複雑な海岸を持っていて、魚介類を育てます。長く、日本列島の太平洋寄り北部の海域は、世界3大漁場の一つでした。それ故に海洋日本の名は世界に知られていました。手を伸ばせば、どこでも新鮮な魚介類が獲られる。
★ 海で外界から遮断された地政的意味は実に大きいと言わねばなりません。世界の多くの国々は、陸地に人工線を引いて国々を分けています。国境をめぐる紛争は日常茶飯事。それが庶民の日常生活レベルでの国際緊張を生み出します。不法入国、不法就労、そして犯罪・・・大国アメリカがメキシコとの長い国境線で手を焼いている悩みなど、日本人には、まずピンときません。何時の時代も、海は、国土防衛、最大の防波堤でした。
★ しかも・・・この平和な群島国には、月日をほぼ正確に4等分した四季が訪れ、自然の恵みをもたらします。春夏秋冬。それぞれに豊かで、四季の変化に富んだ食物を人々に供給し、深い文化を生み出しました。何よりも命の源である食文化。山を潤す豊かな清流は、山野の幸を育て、ミネラルを海に供給して、海の生き物を育みました。そして1年を通して食膳を賑わす旬の味。この四季がもたらすこの幸いは、恐らく世界でも他にない【日本独特】でしょう。
★ 遠い昔、私たちの父祖は、この土地を「豊葦原瑞穂国」と愛でました。その古い伝承をまとめて『古事記』は、驚くべきイマジネーションで現にある日本列島の姿を描き出しています。その土地に大陸から伝わった種もみ直播の陸稲を水田を開いて水稲にし、生産性を飛躍的に高める独創性豊かな米の文化を生みました。
★ 古き、良き時代の日本。その気高いまでに高い日本の精神性を歌い上げ、世界に「ニッポンあり」と注目させた明治の巨人、岡倉天心を思い起こします。今、75歳を終わり76歳になろうとする私が、生まれるよりも前に、英語で「茶の本」を著し、鎖国の江戸時代から国内で熟成させた濃厚な日本文化について、高らかに歌い上げました。
★ たとえば、はじめに次のように述べています。
「西洋人は、日本が平和のおだやかな技芸に耽っていたとき、日本を野蛮国とみなしていたものである。だが、日本が満州の戦場で大殺戮を犯しはじめて以来、文明国とよんでいる」
「いつになったら西洋は東洋を理解するのか。西洋の特徴はいかに理性的に”自慢”するかであり、日本の特徴は”内省”によるものである」
★ 大正から昭和に時代が移り変わった頃の話です。
この指摘は、西洋人に驚愕の眼差しで迎えられましたが、当の日本人は、この誇りを捨て、【理性的に”自慢”する】西洋人を真似ることに専念しました。欧米こそが世界標準・・・特に戦後は完全なまでにアメリカ化した我々は、謙譲に身を包む内省の美徳を捨て去りました。そして、今や、自己主張万能の風潮に身を置いています。
★ 【理性的に”自慢”する】文明の論理に乗りかかった政府は、世にも不思議な悪政で「豊葦原瑞穂国」の農民を殺しました。減反です。その昔、「米作り日本一」を自負する篤農家は、日本のどの村にもいました。その人々に、政府は、「お小遣いあげるから、コメ作りヤメテ」と地方自治体を総動員して農民いじめを続けました。
★ これが我が命、と、先祖代々、農業を誇りにして来た人々をわずかな小遣い銭で徹底的にスポイルしたのです。【理性的に”自慢”する】文明は、農地をつぶして工業を広げました。そして・・・・村に百姓がいなくなった。いまや、国内で消費される食糧のほとんどが・・・驚くなかれ、大豆も、ネギも輸入品。世界的にも食料自給率は最下位をうろつく状態です。
★ それでいて、飽食に身をゆだね。外食産業の過当競争で山なす廃棄食品。篤農の精神を忘れ、肥満体の生活習慣病が蔓延しはじめた民族は一体、どうなるのか? 梅雨の恵みに浸りながら、天の摂理が、この先、どう働くのか? それを思わずにはいられません。
★ 篤農の人に米作りをさせない、それを浸透させるため僅かなカネをちらつかせ、更には農協、町村を総動員して陰湿ないじめを40年間、し続けた政府。コメ政策をめぐる政府の【理性的に”自慢”する】詭弁はやっと終わりそうです。だが・・・もう遅い。一旦、放棄された田圃は容易に元に戻りません。それ以上に、抜かれた魂は戻らぬでしょう。政府の犯罪とも言うべき愚策の尻ぬぐいに、再び農民が動員されます。それでいいのか? 誰も責任をとらないオカミ仕事、誠にここに極まれり、の感一入です。
【注】
本文中、岡倉天心への言及は、京都の茶人「椿わびすけ」さんから岡倉天心の著作を読むようお薦めがあり、それがキッカケで気づきました。ここに記録し、感謝申し上げます。
…・・・・・・・ 吉備高原便り(14) ・・・・・・・・・・
【新企画】 我が家、我が町 の 日々の寸描を掲載します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
西日本一の「ニューサイエンス館」
★ 棚田と松茸山しかなかった岡山県のど真ん中、そこに出現したニュータウンが吉備高原都市です。バブル最盛期に21世紀未来都市のモデルに・・・と、国と県が意気込んで取り組んだ事業でした。その象徴的施設が「吉備高原ニューサイエンス館 」(Kibikohgen New Science Center) 「先端技術の現在」が一目で分かる科学館です。
★ 展示の分野は、エレクトロニクス・新素材・新エネルギー・バイオテクノロジー・・・等。その原理の解説と、現到達段階の新技術、更には追究されている未来技術へと多角的です。子どもも、大人も、見て、触れて、楽しみながら、新しい時代の技術を体験できるのがご自慢。
★ 独立行政法人「科学技術振興機構」のホームページ「日本の科学館めぐり」で調べてみますと、全国には、「科学館」は634館もあるそうです。が、「先端科学」をテーマにしているのは47館だけ。特に中国地方には「KDDI パラボラ館」(KDDI Parabola Pavilion ・山口市)とここだけの二つしかありません。 希少価値があるユニークな科学館、実際、訪れると、納得されると思います。
★ ここは、展示室中央にある”習字ロボット”、ボタンを押すと、「イラッシャイマセ」と挨拶して、握りしめた墨筆で、「科学する心」と書き、記念に渡してくれます。そこから光通信システム、生命工学のバイオテクノロジー、太陽電池の新エネルギー、高分子新素材の構造と機能・・ そして最後はナノテクノロジー(超微細技術)
一巡すると、きっと「目が覚める」思いに浸ります。
★ 1日2回(午前11時、午後2時)の3Dシアターも、お見逃しなく。2台のプロジェクタから、110インチのスクリーンに投影した映像を、特殊な専用メガネで臨場感あふれる立体映像を見ることができます。「群青の舞踏会」と「wings(やませみ)」 きっと驚かれます。
★ 吉備高原都市には、様々な施設がありますが、原則、無料です。ここももちろん、無料。ただ、隣接しているテニス・コートだけが有料。テニスを兼ねて、一日、ゆっくり、一家でスポーツと現代科学のお勉強という過ごし方をなさっている常連もおられるようです。是非、一度、お訪ね下さい。月曜日と年末年始(12/28~1/3)が休館で、それ以外は、毎日午前9時30分~午後4時まで開いています。
by zenmz
| 2006-06-24 15:44
| Vernacular