2006年 07月 15日
【6193】 『一億総評論家』が【Web2.0】時代に |
★ 戦後、一世を風靡した大評論家は大宅壮一さんでした。テレビが登場したのは1950年代半ばでしたが、大宅さんは、テレビの出現を"一億総白痴化"運動と批判し、たちまち流行語になりました。当時、私は大学を出て社会人になったばかりの頃でしたが、当時の情報雰囲気と言えば、書物中心、マスコミもラジオよりも新聞中心で、全体として教養主義的な価値世界観が厳然として支配していた時代だったように思います。
★ 念のために調べて見ますと、大宅さんが"一億総白痴化"運動と書いた原文は次のようなものでした。
★ 大宅さんにとっては、テレビという新しいメディアは紙芝居以下の低俗なマスコミに映ったのです。当時の大宅さんの書かれたルポや評論は、空前のベストセラーを更新し続け、評論家の社会的地位は、現在では考えられないほど高く、また、その評論は社会を動かす程に影響力がありました。
★ ところが、50年後、”大宅予言”は大きく外れました。象徴的な出来事は、東西分裂していたドイツの統一はテレビで実現したことは世界中が一致して認めるところです。今や、テレビは政治を動かし、首相さえ選び出す時代。個人レベルの生活もテレビ抜きで我々の日常生活は成り立たないほどに重要な情報源になりました。
★ そして・・・・国民は、「一億総評論家」に”成長”しました。次々と起こる政治問題、事件ごとにマイクを向けられ、蕩々と見解を述べる庶民の軽評論、真に昔日の大宅さんの小型コピーの輩出を見る想いがします。同時に”専門家”を自称していた職業評論家は急速にカゲが薄くなりました。
★ 時代の移り変わりと共に『一億総”白痴”化』の”白痴”という言葉が一部の心身障害者に対する差別助長に当たると厳しく批判され、言葉自体も抹殺された経緯もあり、これは、既に死語となりました。しかし、カゲでは依然として、テレビの低俗番組が出てくると、マスコミ・教育関係の議論の中で、この言葉が持ち出されることがよくあります。もうそろそろ、全廃した方がいいですね。全く持ち出す意味がありません。
★ 一方、テレビが培った『一億総評論家』運動は、パソコンとインターネットの普及であっという間に全国に広がりました。今や誰でも作れるようになったホームページ・・・ブログとSNSの登場は言論の自由の百花斉放現象を起こしました。今年辺りからケイタイがパソコンを超えて主導権を握りつつあります。
★ ネット上に絶え間なく更新され、流し続けられている自由な言論は、1日24時間、【P2P】(個人対個人)を無限に結んで”論”をなしています。【便所の落書き】レベルのスパムは論外としても、たまたま得たニュースや情報に鋭敏に反応しています。ほとんどまず否定して、自分の肯定するものを持ち上げてそれで論をなす常套パターンですが、こなすほどに洗練されてくるのも事実。
★ 去る4日に総務省が発表した「情報通信白書」によりますと、ネット利用人口は前年比581万人増の8529万人に上る。普及率は全国民の67%に達しているそうです。「ブログ」の登録者数は、昨年度末で計868万人SNS716万人に利用が広がり、【P2P】(個人対個人)交流の場が拡大しました。
★ 日常の生活上の利用度も商品購入の際、消費者の62%はネットで情報を収集。26%はネット上で商品を購入。音楽をネット配信で購入40%。更には農産物の産地や栽培法など、食品の安全情報のチェックや価格もネットという主婦が急増しています。もちろん、この人々が即座に【P2P】(個人対個人)情報交換しているのは想像に難くありません。日用品の商品評価は消費者自身が決める時代になりました。
★ しかし、無政府状態のネット社会は大きな危険を内包しています。白書によると、迷惑メール等で何らかの迷惑を被った人は個人利用者の55%と、半数を超え、企業では68%に上る。ファイル交換ソフト「ウィニー」による機密情報の流出も、根絶できない。法規制も後手後手で、現状では、他人のコンピューターのパスワードを盗んでも、罰せられない。コンピューター・ウイルスの作り方さえ、ネットや書籍で入手できるのが現状です。
★ こうした中で、何か、一つ、手をつけると『一億総評論家』が騒ぐ風潮も出て来ました。責任の所在が明らかでない覆面透明人間がまき散らす刺激的なメールや書き込み、漠とした不安感を抱きつつもネットに寄りかかっている「インターネット依存症」の人々も激増しました。新たな心身症の発生が心配されます。
★ 総務省の「情報通信白書」は、IT革命は、今や、あらたな【Web2.0】時代に突入した、と宣言しています。その特色は、これまで情報受益一辺倒であった利用者が情報発信者として参加し、それを限りなくオープンにする傾向が強まるという二点を挙げています。砕いて言えば、真に生きた情報がこれから限りなく無料に提供される時代になる、と言うのです。
★ その明るい、新しい社会の担い手も、実は、『一億総評論家』 パソコンの帝王・ビル・ゲイツは、「これから20年後、パソコンは無料になる」と予言したと言います。機械も、情報も、無料、タダになる。その近未来創造への歩みが今、始まったそうです。
★ 『一億総評論家』が【Web2.0】時代に突入した・・・・・大宅壮一さんが今、ここにおられたら、何と表現されるでしょう。強い興味を覚えるのは、私自身、イメージが沸かないので、大宅さんのようなセンスのある方に解説して頂きたいと思うのです。
★ とりあえず、ご生前の発想を借用すれば;
★ これから、情報インフラはどうなるのか? ただ一つ、白書も挙げている「ウィキペディア」の実例は、来るべき【Web2.0】時代の先取りとしてかなり具体的に理解できます。
「ウィキペディア」は、今、世界で一番、詳しく、絶えず、最新の情報で更新されているとの評価が高い百科事典ですが、内容のすべてがインターネット上の不特定多数のメンバーの手によって共同制作されています。決まった著者はおらず、「編集コミュニティ」に参加すれば、誰でも随時、項目の追加や内容の追記・修正を行うことができる仕組みになっています。
★ 無料でありながら既存の辞書にはない幅広い情報がカバーされていることから、「利用者参加」と「オープン志向」を体現したWeb2.0の典型的なサービスと、して説明に用いられることが多いようです。これで何とか、おぼろげながら、新しく始まった【Web2.0】時代を考える足がかりが得られた感じがしています。
★ 新聞からテレビ、そしてネットへ・・・・僅か50年の間に情報技術環境は大変化を遂げました。ハード技術が先行し、ソフトがついていけない程の大変革ですが、要は使う我々の主体の問題。先ず自分の置かれた状況で、ハード、ソフトを如何に駆使し、何を作り出すか? これからの時代、学習が一番、大事だと痛感します。
★ 念のために調べて見ますと、大宅さんが"一億総白痴化"運動と書いた原文は次のようなものでした。
「テレビに至っては、紙芝居同様、否、紙芝居以下の白痴番組が毎日ずらりと列んでいる。ラジオ、テレビという最も進歩したマスコミ機関によって、『一億総白痴化』運動が展開されていると言って好い。」(『週刊東京』1957年2月2日号)今から49年まえだったのですね。
★ 大宅さんにとっては、テレビという新しいメディアは紙芝居以下の低俗なマスコミに映ったのです。当時の大宅さんの書かれたルポや評論は、空前のベストセラーを更新し続け、評論家の社会的地位は、現在では考えられないほど高く、また、その評論は社会を動かす程に影響力がありました。
★ ところが、50年後、”大宅予言”は大きく外れました。象徴的な出来事は、東西分裂していたドイツの統一はテレビで実現したことは世界中が一致して認めるところです。今や、テレビは政治を動かし、首相さえ選び出す時代。個人レベルの生活もテレビ抜きで我々の日常生活は成り立たないほどに重要な情報源になりました。
★ そして・・・・国民は、「一億総評論家」に”成長”しました。次々と起こる政治問題、事件ごとにマイクを向けられ、蕩々と見解を述べる庶民の軽評論、真に昔日の大宅さんの小型コピーの輩出を見る想いがします。同時に”専門家”を自称していた職業評論家は急速にカゲが薄くなりました。
★ 時代の移り変わりと共に『一億総”白痴”化』の”白痴”という言葉が一部の心身障害者に対する差別助長に当たると厳しく批判され、言葉自体も抹殺された経緯もあり、これは、既に死語となりました。しかし、カゲでは依然として、テレビの低俗番組が出てくると、マスコミ・教育関係の議論の中で、この言葉が持ち出されることがよくあります。もうそろそろ、全廃した方がいいですね。全く持ち出す意味がありません。
★ 一方、テレビが培った『一億総評論家』運動は、パソコンとインターネットの普及であっという間に全国に広がりました。今や誰でも作れるようになったホームページ・・・ブログとSNSの登場は言論の自由の百花斉放現象を起こしました。今年辺りからケイタイがパソコンを超えて主導権を握りつつあります。
★ ネット上に絶え間なく更新され、流し続けられている自由な言論は、1日24時間、【P2P】(個人対個人)を無限に結んで”論”をなしています。【便所の落書き】レベルのスパムは論外としても、たまたま得たニュースや情報に鋭敏に反応しています。ほとんどまず否定して、自分の肯定するものを持ち上げてそれで論をなす常套パターンですが、こなすほどに洗練されてくるのも事実。
★ 去る4日に総務省が発表した「情報通信白書」によりますと、ネット利用人口は前年比581万人増の8529万人に上る。普及率は全国民の67%に達しているそうです。「ブログ」の登録者数は、昨年度末で計868万人SNS716万人に利用が広がり、【P2P】(個人対個人)交流の場が拡大しました。
★ 日常の生活上の利用度も商品購入の際、消費者の62%はネットで情報を収集。26%はネット上で商品を購入。音楽をネット配信で購入40%。更には農産物の産地や栽培法など、食品の安全情報のチェックや価格もネットという主婦が急増しています。もちろん、この人々が即座に【P2P】(個人対個人)情報交換しているのは想像に難くありません。日用品の商品評価は消費者自身が決める時代になりました。
★ しかし、無政府状態のネット社会は大きな危険を内包しています。白書によると、迷惑メール等で何らかの迷惑を被った人は個人利用者の55%と、半数を超え、企業では68%に上る。ファイル交換ソフト「ウィニー」による機密情報の流出も、根絶できない。法規制も後手後手で、現状では、他人のコンピューターのパスワードを盗んでも、罰せられない。コンピューター・ウイルスの作り方さえ、ネットや書籍で入手できるのが現状です。
★ こうした中で、何か、一つ、手をつけると『一億総評論家』が騒ぐ風潮も出て来ました。責任の所在が明らかでない覆面透明人間がまき散らす刺激的なメールや書き込み、漠とした不安感を抱きつつもネットに寄りかかっている「インターネット依存症」の人々も激増しました。新たな心身症の発生が心配されます。
★ 総務省の「情報通信白書」は、IT革命は、今や、あらたな【Web2.0】時代に突入した、と宣言しています。その特色は、これまで情報受益一辺倒であった利用者が情報発信者として参加し、それを限りなくオープンにする傾向が強まるという二点を挙げています。砕いて言えば、真に生きた情報がこれから限りなく無料に提供される時代になる、と言うのです。
★ その明るい、新しい社会の担い手も、実は、『一億総評論家』 パソコンの帝王・ビル・ゲイツは、「これから20年後、パソコンは無料になる」と予言したと言います。機械も、情報も、無料、タダになる。その近未来創造への歩みが今、始まったそうです。
★ 『一億総評論家』が【Web2.0】時代に突入した・・・・・大宅壮一さんが今、ここにおられたら、何と表現されるでしょう。強い興味を覚えるのは、私自身、イメージが沸かないので、大宅さんのようなセンスのある方に解説して頂きたいと思うのです。
★ とりあえず、ご生前の発想を借用すれば;
「ITに至っては、広告産業構造を一夜のうちに一変してしまった。ラジオ、テレビ、新聞、雑誌は、先ず搦め手から兵糧攻めに遭い、最大の収入源を失い、経営難に悩み、頼みの購読者も恒久的に減少し続けてその存亡を脅かすまでになった。とでもおっしゃるかも・・・
ケイタイ、パソコンを手にした国民は、一斉にネットと結び、『一億総評論家』運動が展開される事態となった、と言って好い。もやは世界の人間は、必要な情報獲得に既存マスコミのような中間媒体を必要とせず、言論も自ら述べる直接民主主義を実践し始めたのである。」
★ これから、情報インフラはどうなるのか? ただ一つ、白書も挙げている「ウィキペディア」の実例は、来るべき【Web2.0】時代の先取りとしてかなり具体的に理解できます。
「ウィキペディア」は、今、世界で一番、詳しく、絶えず、最新の情報で更新されているとの評価が高い百科事典ですが、内容のすべてがインターネット上の不特定多数のメンバーの手によって共同制作されています。決まった著者はおらず、「編集コミュニティ」に参加すれば、誰でも随時、項目の追加や内容の追記・修正を行うことができる仕組みになっています。
★ 無料でありながら既存の辞書にはない幅広い情報がカバーされていることから、「利用者参加」と「オープン志向」を体現したWeb2.0の典型的なサービスと、して説明に用いられることが多いようです。これで何とか、おぼろげながら、新しく始まった【Web2.0】時代を考える足がかりが得られた感じがしています。
★ 新聞からテレビ、そしてネットへ・・・・僅か50年の間に情報技術環境は大変化を遂げました。ハード技術が先行し、ソフトがついていけない程の大変革ですが、要は使う我々の主体の問題。先ず自分の置かれた状況で、ハード、ソフトを如何に駆使し、何を作り出すか? これからの時代、学習が一番、大事だと痛感します。
by zenmz
| 2006-07-15 00:00
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