2007年 10月 31日
【7432】 既にご用済みではありますが・・・・ |
★ 思いがけぬ僥倖が飛び込んできました。
「処分したい。欲しい人、いませんか?」
そんな話を耳にし、すぐ手を挙げました。ずっと以前に幼稚園で使っておられた、という古い足踏みリード・オルガンです。ご親切にわざわざ我が家まで運んでくださり、据え付けまでしてくださいました。
★ 懐かしいですね。多分、60歳以上の年配の方々ならどなたも懐かしい楽器です。どこの学校にも同種のものが音楽室にありました。都会の学校では各教室にもあって、私が小学生の頃には、学級担任の先生が自らそれを弾いて小学校唱歌を教えてくださったものです。
★ 私は、小学校に入る前後に、父親が家庭用の「ベビー・オルガン」を買ってくれて、足踏みオルガンに親しみました。6歳の時、小学校に上がる直前に小児結核が見つかり、子どもの隔離病院である「児童院」にしばらく入院しました。その時の手慰めに・・・との父親の配慮でした。しかし、頂いたオルガンは、7つもストップのついた立派なものです。
★ 私は、終戦の翌年の昭和21年(1946)に、旧制の師範学校に入学し、そこでオルガンの初歩を学びました。師範学校というのは、小学校教師の養成機関で、今の教育大学の前身ですが、当時は師範学校を出なければ小学校教師の資格は得られませんでした。
★ 非常に厳しいスパルタ教育で、習字・図工・農業・音楽は、全員、必修。筆順など「一、二、三・・・」 筆に墨を含ませて、基礎から徹底的に教わりました。音楽の地獄の特訓は、たとえば、「バイエル教則本」を半年で仕上げる。15.6歳で初めてオルガンの鍵盤に触れて、教則本に従って両手の5指の運指法を習得する苦労は、やってみないと分かりません。
★ それからはや60年。早速、弾いてみました。”三つ子の魂、百までも”とは、よく言ったものですね。鍵盤に置いた5指は、すぐ指間の広がりを思い出し、いくつかの和音を奏でてくれました。ちょっと専門的になりますが、足踏みオルガンは、ふいごを風力源にして、鍵盤を押すと、風が出てリードを振動させて音を出します。
★ 内蔵されたふいごには、「吸気式」と「吐気式」があります。いただいたリード・オルガンは「吸気式」ですが、送風の具合が悪いと、アウト。使い物になりません。ゆっくり数度、足踏みしてふいごの吸気力を試してみました。大丈夫! 足踏みを止めて、鍵盤を押しても音が出ます。ふいごに痛みはありません。少々、難がある音は三つのキーだけ。一つは音が出ませんが、素人の楽しみには十分です。本当に、宝を探し当てた想いがしています。
★ 問題は、置く場所です。家族でいろいろと話し合いましたが、結局、私の強い要望を受け入れてくれて、玄関に据えることにしました。我が家の玄関は、正面に2階に通じる階段があり、そこが吹き抜けになっています。この家の中では最もオルガンの音響効果がいい場所です。
★ それが思いもしなかった”宣伝効果”を生み出しました。
我が家を訪れる方々が、扉を開けるや、一見、場違いな珍妙な姿に興味を抱かれ、その都度、「曰く因縁これこれしかじか」と、言っているうちに、若いお母さんたちが、「ここでクリスマス音楽会しませんか?」 想定外の提案。
★ 最近の若い母親たちの実行力には脱帽です。
その気になると、その場で、テキパキと物事を仕上げてしまいます。
「あの子は歌が上手」 「あそこのご主人はギターが・・・」 「リコーダーの合奏もいいよ」 「あなたの美声もひとつ・・」 「ああ、ベトナム娘9人組も歌が上手でしたね。ベトナム民謡でも一つ」 「アメリカ人の老夫婦、ご主人、ギター弾けるって」・・・計画がどんどん形になっていきます。
★ たちまち”出演者リスト”を作り上げ、12月半ばの土曜日の夕べに我が家全館、庭まで開放しての一大イベントを行うことになりました。
私にも、「クリスマス賛美歌3曲を」との厳命。これと、これと、これ。勢いに押されて、私はただ目を白黒・・・。
まあ、ポンコツ・オルガンと喜寿老人の取り合わせ・・・”粗大ゴミ”の二重奏もよろしかろう、ですね。
折角、与えられた”檜舞台”。大切なリユース、リサイクル精神を歌い上げ、アピールしましょう。
★ 予想外の大きな反響に、私は、大きな夢を描いてしまいます。
既に現実のものになった超高齢化社会・・・私の住む町などはとっくに《町民の4人に一人は65歳以上の高齢者》を実現しています。高齢者にどのように老後生活を支えるのか? 寝たきり、痴呆の介護に並び、要支援者の”日々の生き甲斐”を作るデー・サービスなどが大問題になっています。
★ 小学校で不要になり、眠っているリード・オルガンを、全部、補修して、老人福祉施設に寄付してはどうか、きっと、入所高齢者は、生き生きするだろう、と思います。今、65歳以上である人々は、みんな、小学校時代にリード・オルガンで音楽を習いました。
★ 特に要介護の年齢期にある70歳以上の高齢者にとっては、「小学校唱歌」のメロディーはリード・オルガンと共にあります。明治初期に現在のような組織的な学校教育が開始された当初から、リード・オルガンは近代教育の象徴のように各学校に置かれていました。
★ 生活が豊かになり、ラジオ・テレビ・ネット等、最近の音楽メディアの多様化は目を瞠るものがあります。日本が豊かになり、ピアノが普及すると、オルガンは急速に姿をけしました。しかし、私が、現に、そうであるように、昭和ヒトケタ族と、それ以前の高齢者の耳に一番、馴染んでいる「心のふるさと」の音色は、リード・オルガンの響きです。
★ ならば、多分・・・・、と、私は、想います。
廃校や、統廃合された幼稚園、小・中学校には、きっと多くのリード・オルガンが眠っているに違いありません。それらを全部、修理、修復・調整して、老人施設に配置し、入所者や介護・ボランティアに自由に使ってもらう。それだけで、施設の雰囲気は変わるだろう、と思います。自然の風が作り出すオルガンの音色は優しいです。年寄りの心に染みわたります。
★ 今、全国各地で、リード・オルガンを愛好する人々のグループ活動が活発になっています。
全国各地の老人施設にリード・オルガンが設置されれば・・・
何よりも、そこの入所者自身が、それを奏でるはずです。現在、どこの施設でも、幼稚園や小学校の先生をしていた人がいます。この人々の多くはオルガンを演奏出来ます。教え子が集うかもしれません。
ボランティア活動も広がるでしょう。リード・オルガンを愛する。それを契機に集った人々がお年寄りとの新しい交流を始めることも期待できます。
★ 古いオルガンを学校から施設に移す。それほどお金のかかる話ではありません。
それだけで、大きな変化が起こると、思います。
リード・オルガンは魔術師です。寂寥の心を蘇らせ、希望の夢を抱かせます。
岡山の山奥に住む老夫婦の陋屋(ろうおく)に、リード・オルガンが据わった途端に始まった夢いっぱいの楽しい出来事・・・ 正夢である証です。
「処分したい。欲しい人、いませんか?」
そんな話を耳にし、すぐ手を挙げました。ずっと以前に幼稚園で使っておられた、という古い足踏みリード・オルガンです。ご親切にわざわざ我が家まで運んでくださり、据え付けまでしてくださいました。
★ 私は、小学校に入る前後に、父親が家庭用の「ベビー・オルガン」を買ってくれて、足踏みオルガンに親しみました。6歳の時、小学校に上がる直前に小児結核が見つかり、子どもの隔離病院である「児童院」にしばらく入院しました。その時の手慰めに・・・との父親の配慮でした。しかし、頂いたオルガンは、7つもストップのついた立派なものです。
★ 私は、終戦の翌年の昭和21年(1946)に、旧制の師範学校に入学し、そこでオルガンの初歩を学びました。師範学校というのは、小学校教師の養成機関で、今の教育大学の前身ですが、当時は師範学校を出なければ小学校教師の資格は得られませんでした。
★ 非常に厳しいスパルタ教育で、習字・図工・農業・音楽は、全員、必修。筆順など「一、二、三・・・」 筆に墨を含ませて、基礎から徹底的に教わりました。音楽の地獄の特訓は、たとえば、「バイエル教則本」を半年で仕上げる。15.6歳で初めてオルガンの鍵盤に触れて、教則本に従って両手の5指の運指法を習得する苦労は、やってみないと分かりません。
★ それからはや60年。早速、弾いてみました。”三つ子の魂、百までも”とは、よく言ったものですね。鍵盤に置いた5指は、すぐ指間の広がりを思い出し、いくつかの和音を奏でてくれました。ちょっと専門的になりますが、足踏みオルガンは、ふいごを風力源にして、鍵盤を押すと、風が出てリードを振動させて音を出します。
★ 内蔵されたふいごには、「吸気式」と「吐気式」があります。いただいたリード・オルガンは「吸気式」ですが、送風の具合が悪いと、アウト。使い物になりません。ゆっくり数度、足踏みしてふいごの吸気力を試してみました。大丈夫! 足踏みを止めて、鍵盤を押しても音が出ます。ふいごに痛みはありません。少々、難がある音は三つのキーだけ。一つは音が出ませんが、素人の楽しみには十分です。本当に、宝を探し当てた想いがしています。
★ 問題は、置く場所です。家族でいろいろと話し合いましたが、結局、私の強い要望を受け入れてくれて、玄関に据えることにしました。我が家の玄関は、正面に2階に通じる階段があり、そこが吹き抜けになっています。この家の中では最もオルガンの音響効果がいい場所です。
★ それが思いもしなかった”宣伝効果”を生み出しました。
我が家を訪れる方々が、扉を開けるや、一見、場違いな珍妙な姿に興味を抱かれ、その都度、「曰く因縁これこれしかじか」と、言っているうちに、若いお母さんたちが、「ここでクリスマス音楽会しませんか?」 想定外の提案。
★ 最近の若い母親たちの実行力には脱帽です。
その気になると、その場で、テキパキと物事を仕上げてしまいます。
「あの子は歌が上手」 「あそこのご主人はギターが・・・」 「リコーダーの合奏もいいよ」 「あなたの美声もひとつ・・」 「ああ、ベトナム娘9人組も歌が上手でしたね。ベトナム民謡でも一つ」 「アメリカ人の老夫婦、ご主人、ギター弾けるって」・・・計画がどんどん形になっていきます。
★ たちまち”出演者リスト”を作り上げ、12月半ばの土曜日の夕べに我が家全館、庭まで開放しての一大イベントを行うことになりました。
私にも、「クリスマス賛美歌3曲を」との厳命。これと、これと、これ。勢いに押されて、私はただ目を白黒・・・。
まあ、ポンコツ・オルガンと喜寿老人の取り合わせ・・・”粗大ゴミ”の二重奏もよろしかろう、ですね。
折角、与えられた”檜舞台”。大切なリユース、リサイクル精神を歌い上げ、アピールしましょう。
★ 予想外の大きな反響に、私は、大きな夢を描いてしまいます。
既に現実のものになった超高齢化社会・・・私の住む町などはとっくに《町民の4人に一人は65歳以上の高齢者》を実現しています。高齢者にどのように老後生活を支えるのか? 寝たきり、痴呆の介護に並び、要支援者の”日々の生き甲斐”を作るデー・サービスなどが大問題になっています。
★ 小学校で不要になり、眠っているリード・オルガンを、全部、補修して、老人福祉施設に寄付してはどうか、きっと、入所高齢者は、生き生きするだろう、と思います。今、65歳以上である人々は、みんな、小学校時代にリード・オルガンで音楽を習いました。
★ 特に要介護の年齢期にある70歳以上の高齢者にとっては、「小学校唱歌」のメロディーはリード・オルガンと共にあります。明治初期に現在のような組織的な学校教育が開始された当初から、リード・オルガンは近代教育の象徴のように各学校に置かれていました。
★ 生活が豊かになり、ラジオ・テレビ・ネット等、最近の音楽メディアの多様化は目を瞠るものがあります。日本が豊かになり、ピアノが普及すると、オルガンは急速に姿をけしました。しかし、私が、現に、そうであるように、昭和ヒトケタ族と、それ以前の高齢者の耳に一番、馴染んでいる「心のふるさと」の音色は、リード・オルガンの響きです。
★ ならば、多分・・・・、と、私は、想います。
廃校や、統廃合された幼稚園、小・中学校には、きっと多くのリード・オルガンが眠っているに違いありません。それらを全部、修理、修復・調整して、老人施設に配置し、入所者や介護・ボランティアに自由に使ってもらう。それだけで、施設の雰囲気は変わるだろう、と思います。自然の風が作り出すオルガンの音色は優しいです。年寄りの心に染みわたります。
★ 今、全国各地で、リード・オルガンを愛好する人々のグループ活動が活発になっています。
全国各地の老人施設にリード・オルガンが設置されれば・・・
何よりも、そこの入所者自身が、それを奏でるはずです。現在、どこの施設でも、幼稚園や小学校の先生をしていた人がいます。この人々の多くはオルガンを演奏出来ます。教え子が集うかもしれません。
ボランティア活動も広がるでしょう。リード・オルガンを愛する。それを契機に集った人々がお年寄りとの新しい交流を始めることも期待できます。
★ 古いオルガンを学校から施設に移す。それほどお金のかかる話ではありません。
それだけで、大きな変化が起こると、思います。
リード・オルガンは魔術師です。寂寥の心を蘇らせ、希望の夢を抱かせます。
岡山の山奥に住む老夫婦の陋屋(ろうおく)に、リード・オルガンが据わった途端に始まった夢いっぱいの楽しい出来事・・・ 正夢である証です。
by zenmz
| 2007-10-31 12:16
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