2008年 09月 22日
【8181】 「老い」・・・円熟、自己完成への道 |
★ 昨日の「豊後レイコ氏八十八歳自伝出版を祝う会」・・・それは、正に老人パワー全開の活気に満ちた集いでした。ほぼ団塊の世代以上のシニアが152人。ホテルの宴会場は超満員で、次々と飛び出すお祝いの言葉はいずれも含蓄のあるいいスピーチでした。
★ 今なお現役で活躍中の著名な方々が、豊後さんとの出会いで、自らが変貌した体験を披露され、参加者が共感して大きく頷き、拍手を送る・・・その風景が、延々と3時間、続きました。お聞きしていますと、どなたもが、豊後さんの薫陶を受けた、と具体例を挙げて証言されています。
私も、同じ体験を共有しています。大きく首肯。何度も頷いていました。
★ 司会者の開会冒頭の挨拶:
「88歳になって私たちはどれだけ友を持つでしょうか? 本日、お集まりの豊後さんの友人は152人です。ご都合で参加出来ない方を含めますと500人はいらっしゃいます」
★ わき上がる大拍手。
確かに! 米寿の祝いにこれだけの人が、九州から、東京から、全国各地から集うのはそう数ある話ではありません。
★ 脇にいた大学の先生が、「ホンマ、豊後さんは、いい意味でのカリスマですね。この人のお陰で、エルダー・ホステル運動は日本に根付きました」と、しみじみ述懐されていましたが、私も全く同感です。
=== 豊後さんが始めた、エルダー・ホステル運動 ===
★ 参加者の顔ぶれは、図書館関係の仲間が3分の1、残り3分の2が、豊後さんが創設された「日本エルダー・ホステル協会」の会員さんだそうです。私にとっては初めてお目に掛かる人々ですが、いずれも私より若いシニア。深い教養の知的な雰囲気が会場いっぱいに漂っていました。
★ そんな中で、私の姿を確認した豊後さんは、周りの皆さんに「この人が、私たちの会の設立趣意書を書いたのヨ!」と、紹介してくださいました。そして抱きかかえんばかりに横に座らせ、記念写真。好奇の眼差しが集まりました。 そうです。22年前、その設立趣意書を書いたのは、私でした。ですから感慨一入のものがあります。
★ ”エルダー・ホステル”の人々・・・このパワー全開の高齢の群像を前に、私は深い感動を覚えます。この団体は、最初、「エルダー国際交流協会」との名称で発足しました。 当時は、すべてが豊後さんお一人の夢でした。
それが今、現実に豊かな実体を備えて目の前にあるではありませんか。
★ 「私、エルダー・ホステル、という運動を始めようと思うンだけど・・・」
昭和60年(1986年)の暮れであったと思います。その年の夏に新聞社を定年で去り、逼塞している私宅を訪ねて来られた豊後さんは、定年まで数年を残して突然、勤め先の「アメリカン・センター」を辞職し、既にJR大阪駅に近い中津のマンションの一室を借りた、とおっしゃいます。新しく事務所を開くため、だそうです。
★ 「エルダー・ホステ”ス”って? 豊後さん、あなたは美しい。しかも知的な美貌です。大阪の財界人好みかもしれんが・・・・採算の見込み、あるんですか?」
”ホステル”を”ホステス”と聞き違えました。
★ 「アンタ! ちゃんと聞きなさい。ホステスじゃない、ホステル。ほら、ユース・ホステルというのがあるでしょう。あのホステル。いい、ちゃんと聞いてヨ!。説明するから」 これから高齢者が増える。未だ元気なのに退職、第二の人生、これこれ、シカジカ・・・・だから、・・・・・「分かった?」
★ 「ふん、ふん、なるほど、そうですか。エッ老人の日米交流・・夢があって面白そう、結構な話ですね」 ひとわたり、豊後さんの壮大なお話を伺いました。ユース・ホステル運動にヒントを得て、アメリカで始まった高齢者の生涯学習運動、それを日本でもやってみたい、とおっしゃるのです。国内外旅行と学習を結びつけた高齢者の生涯教育・・それが豊後さんのコンセプトでした。
「分かった? 分かったら、趣意書、書きなさい」
★ まるで講義の後のテストみたいに趣意書を書くハメになったのです。ともかく”課題レポート”を提出しました。翌年の早春、会は、無事、正式発足し、私も事務所に屡々、出入りし、スタッフの皆さんとも親しくお付き合いをさせていただきました。
★ しかし、会活動には参加しませんでした。折から岡山に新設大学を開校する話があり、その設立準備に入っていたからです。そして2年後、私は、岡山に居を移し、大学教員の道を歩むことになりました。
=== 和製シッピー族の誕生 ===
★ 豊後さんの活動は、当初、アメリカのエルダー・ホステルと提携して日米高齢者の相互訪問プログラムが多かったように記憶します。今でこそ、高齢者を対象に「旅と生涯学習」を結びつけたプログラムを、有名旅行社や、国公立・私立大学がこぞって始めるようになっていますが、その先駆けは、豊後さんの、「エルダー国際交流協会」でありました。今から思い返しても、如何にも斬新なアイディアだったと思います。
★ それから2年後、私は岡山へ移り、新しく制度化された「介護福祉士」の養成を始めました。そして卒業生・在校生を対象にした全学「老人介護セミナー」に豊後さんを講師にお招きし、エルダー・ホステル運動の思想と実践について講演をお願いしました。
★ 「介護」と言えば、ややもすれば、老人の心身機能の衰えばかりが強調されます。しかし、「老い」は、心身の衰えと同時に、智慧の円熟の両方を兼ね備えています。言わば、1枚のコインの裏表、の関係にあります。この両義性をキチンと学生たちのアタマに叩き込みたい、それが私の狙いでした。
★ 学生たちは深い感銘を受けました。介護に携わる人たちは、どうしても「老い」のネガティヴ面に目が向きがちです。それは、社会一般にも云える”社会通念”になっているのではないでしょうか?
今日の集いに見られる”知の老人パワー”・・・これを見て欲しい。
長年、障害者問題や老人問題と取り組んできた私の想いです。
★ 「エルダー国際交流協会」は、発足と同時に、「会報を出したい」と、お求めがあり、「日本にもシッピー族宣言」と題した原稿をお送りしたことがあります。幸い、原本が残っていました。
(執筆は、1986年5月)
今日は、大阪から戻って、未だ興奮冷めやらず、改めて、豊後さんの”先見の明”に敬服しております。
** ご挨拶 ** ブログ【彷徨人生・・・喜寿から傘寿へ】公開に当たって
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私も、同じ体験を共有しています。大きく首肯。何度も頷いていました。
★ 司会者の開会冒頭の挨拶:
「88歳になって私たちはどれだけ友を持つでしょうか? 本日、お集まりの豊後さんの友人は152人です。ご都合で参加出来ない方を含めますと500人はいらっしゃいます」
★ わき上がる大拍手。
確かに! 米寿の祝いにこれだけの人が、九州から、東京から、全国各地から集うのはそう数ある話ではありません。
★ 脇にいた大学の先生が、「ホンマ、豊後さんは、いい意味でのカリスマですね。この人のお陰で、エルダー・ホステル運動は日本に根付きました」と、しみじみ述懐されていましたが、私も全く同感です。
=== 豊後さんが始めた、エルダー・ホステル運動 ===
★ 参加者の顔ぶれは、図書館関係の仲間が3分の1、残り3分の2が、豊後さんが創設された「日本エルダー・ホステル協会」の会員さんだそうです。私にとっては初めてお目に掛かる人々ですが、いずれも私より若いシニア。深い教養の知的な雰囲気が会場いっぱいに漂っていました。
★ そんな中で、私の姿を確認した豊後さんは、周りの皆さんに「この人が、私たちの会の設立趣意書を書いたのヨ!」と、紹介してくださいました。そして抱きかかえんばかりに横に座らせ、記念写真。好奇の眼差しが集まりました。 そうです。22年前、その設立趣意書を書いたのは、私でした。ですから感慨一入のものがあります。
★ ”エルダー・ホステル”の人々・・・このパワー全開の高齢の群像を前に、私は深い感動を覚えます。この団体は、最初、「エルダー国際交流協会」との名称で発足しました。 当時は、すべてが豊後さんお一人の夢でした。
それが今、現実に豊かな実体を備えて目の前にあるではありませんか。
★ 「私、エルダー・ホステル、という運動を始めようと思うンだけど・・・」
昭和60年(1986年)の暮れであったと思います。その年の夏に新聞社を定年で去り、逼塞している私宅を訪ねて来られた豊後さんは、定年まで数年を残して突然、勤め先の「アメリカン・センター」を辞職し、既にJR大阪駅に近い中津のマンションの一室を借りた、とおっしゃいます。新しく事務所を開くため、だそうです。
★ 「エルダー・ホステ”ス”って? 豊後さん、あなたは美しい。しかも知的な美貌です。大阪の財界人好みかもしれんが・・・・採算の見込み、あるんですか?」
”ホステル”を”ホステス”と聞き違えました。
★ 「アンタ! ちゃんと聞きなさい。ホステスじゃない、ホステル。ほら、ユース・ホステルというのがあるでしょう。あのホステル。いい、ちゃんと聞いてヨ!。説明するから」 これから高齢者が増える。未だ元気なのに退職、第二の人生、これこれ、シカジカ・・・・だから、・・・・・「分かった?」
★ 「ふん、ふん、なるほど、そうですか。エッ老人の日米交流・・夢があって面白そう、結構な話ですね」 ひとわたり、豊後さんの壮大なお話を伺いました。ユース・ホステル運動にヒントを得て、アメリカで始まった高齢者の生涯学習運動、それを日本でもやってみたい、とおっしゃるのです。国内外旅行と学習を結びつけた高齢者の生涯教育・・それが豊後さんのコンセプトでした。
「分かった? 分かったら、趣意書、書きなさい」
★ まるで講義の後のテストみたいに趣意書を書くハメになったのです。ともかく”課題レポート”を提出しました。翌年の早春、会は、無事、正式発足し、私も事務所に屡々、出入りし、スタッフの皆さんとも親しくお付き合いをさせていただきました。
★ しかし、会活動には参加しませんでした。折から岡山に新設大学を開校する話があり、その設立準備に入っていたからです。そして2年後、私は、岡山に居を移し、大学教員の道を歩むことになりました。
=== 和製シッピー族の誕生 ===
★ 豊後さんの活動は、当初、アメリカのエルダー・ホステルと提携して日米高齢者の相互訪問プログラムが多かったように記憶します。今でこそ、高齢者を対象に「旅と生涯学習」を結びつけたプログラムを、有名旅行社や、国公立・私立大学がこぞって始めるようになっていますが、その先駆けは、豊後さんの、「エルダー国際交流協会」でありました。今から思い返しても、如何にも斬新なアイディアだったと思います。
★ それから2年後、私は岡山へ移り、新しく制度化された「介護福祉士」の養成を始めました。そして卒業生・在校生を対象にした全学「老人介護セミナー」に豊後さんを講師にお招きし、エルダー・ホステル運動の思想と実践について講演をお願いしました。
★ 「介護」と言えば、ややもすれば、老人の心身機能の衰えばかりが強調されます。しかし、「老い」は、心身の衰えと同時に、智慧の円熟の両方を兼ね備えています。言わば、1枚のコインの裏表、の関係にあります。この両義性をキチンと学生たちのアタマに叩き込みたい、それが私の狙いでした。
★ 学生たちは深い感銘を受けました。介護に携わる人たちは、どうしても「老い」のネガティヴ面に目が向きがちです。それは、社会一般にも云える”社会通念”になっているのではないでしょうか?
今日の集いに見られる”知の老人パワー”・・・これを見て欲しい。
長年、障害者問題や老人問題と取り組んできた私の想いです。
★ 「エルダー国際交流協会」は、発足と同時に、「会報を出したい」と、お求めがあり、「日本にもシッピー族宣言」と題した原稿をお送りしたことがあります。幸い、原本が残っていました。
(執筆は、1986年5月)
「エルダー国際交流協会」発足に寄せて★ 22年前に書いた随想ですが、今、眼前に見る「老人パワー」は、正に”シッピー族”誕生そのもの。私には、とりわけ深い感慨があります。
銭本 三千年
先日、新着の雑誌を見ていたら「西暦2000年にはアメリカ社会にシッピー族の黄金時代がやってくる。既にその兆しが始まっている」と、アメリカ国際大学の社会学者・リネット・ミルナー先生が新説を打ち出しているのが目に止まりました。
これを読んで、 「エルダー国際交流協会」が誕生した社会的背景は、これだ、と、ピンと来るものがありました。エルダー・ホステル運動にご参加の皆様とご一緒に記事を読んでみましょう。きっと、私の感想にご同意いただけると思います。
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1960年代、アメリカで反体制のヒッピー族が誕生し、世界の風俗、思想、経済など広範な分野に影響を及ぼした。1980年代になると、新保守主義が台頭し、ユッピー族が登場した。有名大学卒、大都市の優良大企業に勤め、年収4万ドル以上を稼ぐ。三つ揃え背広姿でBMWを乗りこなすアイボリー・ルック。それが今、アメリカを動かすエリートだ。
21世紀に、これに取って替わるのが「シッピー族」である。’Senior Independent Pioneer’ つまり「実年の」 「独立心豊かな」 「開拓者」 55歳から80歳までの年齢層。それも65パーセントは女性で、結婚と家庭経営の達人。加えて半数は離婚経験を持つ。 要するに、人生経験が豊かで、自主、独立心に富んだ”成熟の群像”である。
この成熟した群像が、2000年に社会の先頭に立つ。その主役交代は既に始まっている。なによりも個人資産は、この年代層に集中しており、経済的に豊か。余裕がある。それに大きな特徴は、現役を退いて欲がない。既成の管理社会には厭きている。
食うに困らぬ群像は、利益を求めては動かない。個々人、すべての関心は、自らの人生の充実、満足に向かう。こうして「シッピー族」は、21世紀創造の開拓者として社会の表に再登場する。
(USA TODAY April 26. 1986)
今日は、大阪から戻って、未だ興奮冷めやらず、改めて、豊後さんの”先見の明”に敬服しております。
◎ 老後を如何に生きるか? 大正、昭和、平成にわたって筋の通った生き方をした、見識ある女性が綴った自分史(日野原重明先生推薦文)です。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ぜひ、ご一読を。
豊後レイコ著:「八十八歳レイコの軌跡--原子野・図書館・エルダーホステル」 (ドメス出版刊、本体2400+税)
** ご挨拶 ** ブログ【彷徨人生・・・喜寿から傘寿へ】公開に当たって
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by zenmz
| 2008-09-22 00:00
| 一期一会